第31~33日目 SそれともM? 9月
「先生、この学年で一番怒ったら怖い先生は、だれですか?」
『逆に、誰やと思う?
僕は怒らんから、圏外かな』
「うーん、正田先生ですかね(笑)
そうですねー、私は全員の先生に本気で怒られたことがないのでわかりません。それでも、松井戸先生が怖いと聞きます。」
『僕? いや、待て待て。
普段怒らん先生(俺)がキレたときが一番怖いからやろ!! まぁ、普通に過ごしていれば、本気で怒られることはないやろ。
松井戸先生かーー、ノーコメントで。』
「先生は、なぜ相馬さんを怒らないのですか?(なぜか、相馬さんが聞いて欲しいと言っていました。)」
『怒ったら喜ぶって聞いたから。
でも、この前の課題しなかった件は、言ったったなー
怒られてる意識なかったのか! 』
親父はいつもの定位置で、ウンウン頷きながらこの日記を読んでいる。
「相馬さん、かなりのMだわ。それで、正田先生は相当なS決定!! 分かる、分かる」
そう言いながら、納得した表情をしている。そんな親父は、ふと自分の家族を想像してみた。よくある4人家族で、妻と娘と息子。
「母さんなぁ、ありゃ、超ドSだわ。うん、間違いない! 俺が何かって言ったら倍返しの攻撃を仕掛けてくるし、俺が犬に噛まれた時なんて、助けるどころか顔がニヤリと笑ってやがるし。残るはお嬢とボクちゃんか」
家族が聞いたら激怒するようなことを、平気でこき下ろしている。みんなに聞かれていないものとばかり、普段の親父よりも気が大きくなっているのか。とにかく、寝ている家族の悪口は続く。
「お嬢のほうは、先生に叱られても平気なとこ? 平気どころか、日記を読む限りちょっと喜んでる風だな。Mっ気の変態? ボクちゃんは……何だろ? うーん? 怒ることもなければ、泣くこともないし。存在感がないといえばないし。最近、笑った顔見てないし。よく、分からん奴だからな。保留。で、俺はどうだろ。奥さんには、されてばっか頭が上がらんからなぁ。不本意のMってことで」
勝手に提議したSかMか問題は、親父なりに解決してその日就寝した。そして次の朝、リビングでSかMか問題が勃発していた。
「何言ってるの? いい格好して、Sなんて言って!
現実見て! あんたは、どう見てもMよ! 」
「私は、絶対Sじゃなきゃ嫌だよ」
「お母さんは、Mだよ? 」
「ボク、S」
「ちょっと、ちょっと、みんな、お父さんの意見も聞いて! 」
と、会話に割り込んだ親父。家族の注目を一身に集めながら、話し始めた。
「ねぇ、みんな、自分たちのことちゃんと分かってる? お父さんから客観的に見て、みんなに教えてやるよ。お母さんはまず完全なるドSで、お前は嫌がりながらも喜ぶMっ気気質……」
と娘に指差しながら説明し出した親父だったが、みんなのキョトン顔に親父もキョトン。お互いが、
「何のこと? 」
と同時に声を発した。もう、時既に遅し。背中から冷や汗がじわりと出てきた親父を尻目に、娘は淡々と言った。
「体操服のサイズの話だったんだけど。てか、変なこと考えてたの? 」
どちらとも答えられない親父だったのは、言うまでもない。
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