第21~25日目 性格診断 7月

《火曜日》

「今日は漢字の勉強を2分しました。」



『なにそれ??少な!!

漢字検定、次は受かろうな!!!』


《水曜日》

「漢検は、もう受けたくないです。もう、嫌いになりました。」



『まぁ、挫折も経験しないとだめ。

リベンジしなさい。』


《木曜日》

「今日の漢字テストが簡単だったのか、ほとんどの人が満点でした。今日はがんばったのに、、、。

ま、私なりにはよかったです。」



『掃除の時間、ギリギリまで雑巾洗ってたな。

勉強する時間なかったからか、、、?(笑)

今日は、何点とったん?

ま、良かったな。』


《金曜日》

「9点を取ったと思います。多分。よかったです! 」



『いったい、何点満点?

満点以外は「よかった!」とは言えんだろうが!!! 』


《月曜日》

「月曜日にしゅく日すごく大いですね。

月曜日の部活に全然行けていません。

今回で、3回目でした。」



『“祝日”と“多い”だろ!!

漢・字・が・ん・ば・れ!!』



親父は、いつものようにリビングで若草色の日記を手にとってソファーに座っている。組んだ足をブラブラさせて、だらっとしながらソファーに肘を掛けた左腕に日記を持っている。かなり、お疲れモードの親父。



「あぁ、久しぶりに日記読むなぁ。どれどれ。あれ? 一週間も、内容がずっと漢字の話なんだけど。漢字の話を、延々とよく書けるもんだ。漢検のテストを受けたことも、知らなかったわ。ほんと、漢字の間違いヒドイな」



最近は親父の仕事が忙しく、日記を読むのも久しぶりのようだ。ストレス解消の日記に、癒される親父。



「こんな短い一行に、“祝日”と“多い”の漢字が書けてないなんて。はぁぁ」



大きいため息が1つ、静かなリビングに響き渡る。



「俺が、一肌脱いでやるか! こやつは漢字が苦手なのに、2分しか勉強しないで“9点”て。漢字を覚えるのは、そんなに簡単じゃないぞと」



親父は握り拳を作って自分の腰をトントンと叩くと、ソファーから立ち上がった。交換日記をテーブルの元の位置に置いた。疲れた足を鼓舞しながら、風呂場へズンズン歩いて行った。

翌朝の親父は、いつもとは違ってキリリとした面持ちで朝ごはんを食べている娘の前の椅子にドッカリと座った。

そして、娘にこう切り出した。



「なぁ。お父さんさ、お前と四字熟語をどっちが多く書けるかの競争したいんだけど。時間ある? 」


「ん? 食べてからだったら、いいけど」



タイマーで30秒をセット。



「用意、スタート! 」



ピピピの機械音と同時に、2人は鉛筆から手を離した。



「じゃ、お父さんから発表してよ」



「一生懸命、一心同体、付和雷同、以心伝心、他力本願、風林火山! 6個書けた。どうだ!! 」



一心同体…二人以上の人間が心を一つにして、一人の人間のように結びつくこと。

付和雷同…一定の主義・主張がなく、安易に他の説に賛成すること。

以心伝心…言葉によらずに、互いの心から心に伝えること。

他力本願…比喩的に、他人にたよって物事をしようとすること。

風林火山…武田信玄が軍旗に用いた「孫子」の句「疾如風、徐如林、侵掠如火、不動如山」を略称したもの。 ※


「お父さんのって、人に頼ったり人任せのような四字熟語ばっかだね」


「なんだよ! 今度は、お前の番だぞ。見せてみろよ!! “才色兼備、絶体絶命、文書偽造、一網打尽、枝葉末節、半信半疑” はぁ?? まるでお前は、“才色兼備”の私が“絶体絶命”になったので“文書偽造”したら“一網打尽”にされてしまったことなど“枝葉末節”なことだ。とでも、言いたいような内容だな! どこまでも、お前の自信過剰な性格が伝わってくるわ」



一網打尽…一度に一味を全部捕らえること。

枝葉末節…事柄の本質からはずれた、どうでもいいような細かな部分。

半信半疑…なかばは信じ、なかばは疑うこと。※



「だから? 同点じゃん 」


「だから? って、だいたい“文書偽造”って、四字熟語じゃないだろ。てことで、お前は5個。俺の勝ち」


「もう、お父さんの勝ちでいいよ 」


「って、まるで俺が負けみたいじゃないか。お前の漢字に対する意欲を持たせようとだな……」


「“半信半疑” ってことで」



と言うだけ言って、さっさと出掛けてしまった。





※オックスフォード辞書、コトバンク引用。


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