第12日目 卵が、先か?ニワトリが、先か? 交換日記5月
「私、作文を書きました。
私の作文は、すごくまちがっていました。
私は、もっと上手に作文を書きたいです。
私は知っているように、すごく漢字が苦手です。
私は、覚えるのが苦手だという事が大きな理由です。私は漢字のテストで悪い点しか、まだ取ったことがありません。
もし、合格点が50点だとしたら、毎日居残りになります。(やばい!)
先生、どうやって漢字を覚えてますか?」
『国語の授業をしっかり受けて、文章力をつけていこう!
結局、漢字は書いて覚えるしかないですね。
難しい!と思ったものは、どんどん書いてこ!』
「そーだろ、そーだろ。やっと、気がついたんだな。漢字だよ! お前に足りないのは、漢字! それに、平仮名が多すぎだわ」
と、親父はノート越しの娘に偉そうに言ってみた。勢いよくテーブルをドンドンと叩いたので、上に置いていた炭酸ジュースの入ったコップが少し揺れて泡がシュワッと弾けた。
親父が疲れているときは、いつも炭酸ジュースが欠かせない。さらに言えば、週末解禁のアルコールが恋しい。
「漢字が、先か? 文章が、先か? どっちを優先すべきなんだ? 卵が、先か? ニワトリが、先か? だいたい、漢字が、卵? 文章が、ニワトリ? 」
親父は、考えてみた。中学生だった頃に、友だちと話し合って答えが出なかった“卵が先か、ニワトリが先か”問題。
誰もが一度は、考えたことのある問題であるだろう。そして、決して答えが出ない。出せない問題である。
モヤモヤっとした気持ちだけが残った親父は、
「はあぁぁぁぁ」
と大きなため息を1つ。
そして親父は、気づいてしまった。
「“覚えるのが苦手”?」
ポソリと呟くと、さっき娘に対して偉そうなことを言ったことを反省して申し訳ない気持ちになった。
なぜなら、娘の誕生日を最近まで覚えることが出来なかった張本人は親父である。
「まぁ、文章力がなくても、漢字が書けなくても、自動変換やAIも発達してるし、必要ない、必要ない!」
親父はさっき言ったことの舌の根が乾く前に、自分の意見を翻した。
親父と娘に足りないのは、やはり記憶力なのかもしれない。
後日の日記には、こんな報告があった。
「今日、初めて漢字で満点を取りました! すごく、嬉しいです!」
『その積み重ねが、大切です!よく頑張った!』
めでたし、めでたし。
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