第9日目 娘のいないリビングで
「 今日、学習合宿に行きました。
私はお風呂に入る時間がすごく長かったので、みんなに迷惑をかけました。
私は、次からはお風呂にちょっとしかつからないと決めました。
私は今日授業の時先生が入ってきたら、大きな声でお願いしますと言えました。
明日の目標は、メリハリをつけることです。
今日の晩御飯が、すごく美味しかったです。
それでもすごく量が多くて、全部食べられませんでした。
旅館の人に申し訳ないですが、次は全部食べたいです。」
『 グッド💮その気持ちもしっかり伝えられるといいですね。』
今朝から、娘は合宿に出掛けた。娘がいない2日間というのは、この夫婦にとって修学旅行以来のことであった。
“夫婦水入らず”というのは、新婚さんか子育てが終わった夫婦に言えることではないだろうか。こちらの夫婦には、まだまだ“子はかすがい”という言葉のほうが似合っているようだ。
朝から忙しそうに大きな荷物を車に積み込んでいた妻は、親父に一言、
「今日は、お互いにゆっくりしよう! 金曜日だし、久しぶりに友だちと飲んで来たら? 」
と一方的に言って、娘と学校へ出掛けてしまった。
妻からの裏のメッセージは、きっと(今日ぐらいゆっくりしたいから、晩御飯は作りません。分かったね? )
ということなのだろう。
かすがいが居なくなってしまうと、繋がっていた物はバラバラになってしまうものである。
今頃かすがいは、北陸で美味しい夕食を食べていることだろう。
次の日、娘もおらず朝から暇をもて余した二人の
会話も弾まないので、それぞれの趣味に勤しんでいた。
妻はモップを犬の訓練学校へ連れて行き、親父はというと唯一の趣味である“歴史小説”をリビングのテーブルで黙々と書いている。誰にも読まれていない親父の書いた小説は、既に5作ほど仕上がっている。
今は、妻の好きな戦国武将である“織田信長”が登場する小説を執筆中だ。織田信長が登場するなら、今度こそは流石に妻も読んでくれるだろうか。
そう、妻の好きな“織田信長”に袖にされた武将“佐久間信盛”が主役の話を。
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