第8日目 内緒のハンバーグ屋さん

「 今日私は、4月オープンしたハンバーグ屋さんに行きました。

私たちは、いつもハンバーグ屋さんに行くために遠くまで車で行っていました。

それでもその店が私の家の近くにオープンしたので、すごく嬉しかったです。

その店のハンバーグが、すごく美味しかったです。

すごくジューシーでした。

野菜のバイキングもあります。

他にもジェラード飲み物の食べ放題と飲み放題があります。

野菜のバイキングでは新鮮な野菜を使っているので、すごくシャキシャキして美味しかったです。」


『 いいですね。

行ったことがないので、次見つけたら是非行ってみたいなぁと思いました。

お腹がすいてきました』



「え?! ちょっと、待って! ちょっと、待って! 俺、行ってないわ。この、ハンバーグ屋さん」


 この先生と娘との交換日記を読むのが親父の日課で毎日の楽しみになっているが、読むや否や声を荒げて言った。

 時間も時間なのに大きな声を出してしまった親父はハッと我に返って、今度はブツブツ呟いた。


「これって、本当に我が家の話なん? そういや、昨日ハンバーグ屋さんのチラシ入ってたような……」


割引券が付いていたハンバーグ屋さんのチラシを探したが、いつの間にかなくなっている。


「えーー、マジか。俺に内緒で、二人で行ったんかな?」


 毎日毎日遅くに帰宅するので、夕食を一緒に食べに行く時間などないのは勿論分かってはいる。

が、何だか親父は納得がいかない。


「行きたいって、言ってたから日曜日に行こうかと思ってたんだけどなぁ……。

俺も行きてぇなぁ。」


 諦めの悪い親父は、しばらく古新聞の束の中を探し続けていた。


 次の日、娘の日記を読んだとは言えない親父は、


「なんかさぁ、近くのハンバーグ屋さんのチラシ入ってたんだけど、今度の日曜日でも行こっか?」


 最後の勇気を振り絞った親父は、何も知らぬかのように出来るだけとぼけて言ってみた。

 

食いしん坊の娘のことだ。きっと、何度でも行きたがるだろ!ま、俺は心が広いから、別に内緒にされてたからといって気にしねぇから、安心しろ。また、食べに連れてってやろう。


「え?!当分、ハンバーグは要らないかな。」


 親父の気持ちと裏腹に、娘は即答で断った。

なぜなら娘と妻は、クーポン券で通常の倍300gのハンバーグをたらふく食べていたのだ。


「俺は、食べたいんだけど?」


 ボソッと言った親父の言葉を、2人は聞こえないふりをした。




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