第7日目 鍵がない?
「 今日はうちのクラスの中で 初めて1番か2番に学校に着きました。
私は、3階の教室に来て教室が開いていないことに気がつきました。
私は、何をするかが分かりませんでした。
それで私は、職員室に行って鍵を取ってくるということに気がついたので、職員室に行きました。
でもそこにはなかったので、教室に戻ったらドアが開いていました。
男の子が、鍵を取ってきていたのです。
私は、自分が情けなく思いました。」
『 それに気づいて行動できたのであれば、情けなく思うことはありません。
次は、すぐに動けるといいですね。』
「情けない……ねぇ? 鍵を取りに行けなかったぐらいで情けないって思うんなら、これから先、何万回情けないって思わないといけないんだか?」
日記を片手にふぅっと深いため息をついた後、仕事で疲れた体をソファーに預けていた親父は、
「ん?」
と、何か閃いた顔をした。
「よく考えたら、職員室行くときにクラスの男子とすれ違ってるはずだな!そもそも、なんで入れ違ったんだ?」
また違う疑問が増えた親父であったが、
「それに気づいて行動できたのであれば、って言葉ほんと感動。娘を慰めてくれて、先生、ホントありがとうなぁ」
先生からの赤ペンで書かれた返事を何度も眺めていた親父の目頭は、じぃんと熱くなっていた。
次の朝いつもより遅く起きてきた娘が、
「ママ、昨日学校に早く着きすぎちゃった。も、少し遅くに送ってもらっていい?」
そろそろ出かける用意をしている親父が、
「早くに行ったほうが、教室でゆっくりできるんじゃない?」
と言うと、
「だって、鍵開けてくれる子より後に行かなきゃ。
職員室どこか分からないもん。今さら、聞くのも恥ずかしい」
「……。情けないかぁ、そうかもなぁ。なんだ」
そう小さく呟いた親父は、妙に納得したような顔で玄関の扉をそっと閉めた。
なんだ、“ない”のは鍵ではなく、職員室だったのだと。
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