第5日目 縄跳び

「 今日は体育でテストがありました。

私は時間がなかったので何もやらなかったけど 、テストに落ちると思います。

私はすごく体がかたいし、二十跳びができないからです。

次の体育の時 着替えるのを早くしたいです。」


『 何のテストをやったんですか?

僕も、とても体が硬いです。

二十跳び→二重跳びですね。』


 親父は小首を傾げながら、ソファーで腰を掛けている。もちろん、その手には娘と先生の交換日記。


「いったい、この体育の悩みというヤツは“二重跳びができないこと”なのか、“着替えるのが遅い”ことなのか?」


 確かに、二重跳びのテストに落ちることを心配しているわりに、何も練習していないらしい内容だ。


「二重跳びの意味を、まず知っているのか? この文字だと、二十回跳ぶってのと勘違いか? さすがに、そこまでズレてないよなぁ?」


 縄跳び二十回連続跳ぶことは、いとも容易すぎるので勘違いのしようがないだろう。もしかすると、娘は二重跳びのやり方を知らないのかも知れない。

 そもそも縄跳びとは、体の柔軟性が問われる運動なのだろうか。


「いやいや、待て待て、着替えるのを早くしたいってなら、要するに着替えが遅くて練習出来なかったってことだなぁ?」


 考えれば考えるほど、どんどん深みにはまっていく内容だ。しばらく、ウンウン考えていた親父だったが、


「結局の悩みは、早く着替えるようになりたいってことだな!うん!なぁんだ、アイツの悩みって大したことないな。良かった、良かった。うん」


 傾げていた頭を戻すと、無理矢理に自分を納得させた親父はスッキリとした足取りでお風呂場へ向かった。


 そういえば、最近娘が登校前に縄跳びをしているようだ。

 駐車場のフェンスには、縄跳びがだらりとやる気なくぶら下がっていた。



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