第23話

 食事が終わって、ごちそうさまを告げたあと。

 テツヤはもっとも気になっている質問をぶつけることにした。


「そもそも、マナカさんって、なんで俺からの告白をOKしようと思ったの? ていうか、お姉さんに成りすまして、その日に告白されるなんて、びっくりしなかったの?」


 マナカはお茶を飲んで、胸元をトントンする。


「それはアレですよ」

「ちょっと、マナカ!」


 レイはストップをかけたが、何の役にも立たなかった。


「お姉ちゃんは学校で独りぼっちじゃないですか。それじゃ、あまりに可哀想じゃないですか。結城くんなら、愉快な話し相手になってくれると期待したのです。……あ、もちろん、びっくりしましたよ」

「あはは……」


 テツヤは苦笑いしておいた。


「まったく……」


 レイはうんざり顔になる。


 ホントお姉ちゃんのことが好きなんだな。

 マナカにとって、同じ日に生まれた姉は、独りぼっちで、可哀想で、助けたくなる存在らしい。


「だから、結城くん、ありがとう。お姉ちゃんと一緒にお昼ご飯を食べてくれて」

「いい加減にしなさい、マナカ。余計なことをしたっていう自覚を持ちなさい」

「え〜、いいじゃん。結城くんからの告白を私がOKしたから、お姉ちゃんはSNSの仲間ができたし、今日だって、おいしい玉子焼きを食べられるんだよ」

「いってくれるわね」


 双子のケンカっておもしろいな。

 同じ顔の2人がバトルしている。

 格闘ゲームの同キャラ対決みたいに。


「結城くんはどうでしたか? お姉ちゃんと過ごす時間は楽しいですか?」

「そうだね、刺激的ではあるね。レイさんって、良くも悪くも突飛とっぴなんだ」

「よかった! そういってくれて! 結城くんからの告白をOKしたのは、私の人生で1番の英断でした!」


 マナカはケロッとしており、反省する気はないらしい。


「つまるところ、俺たちはマナカさんの手のひらの上でコロコロされているのかな?」

「いやだな〜、人聞きが悪いですよ〜」


 招き猫みたいに手をクイクイしている。


「そうそう、忘れないうちにこれを」


 レイからお金の入った封筒を渡される。


「こんなに? 半分の金額でいいよ」

「黙って受け取りなさい。付加価値よ、付加価値。外で食べるご飯だって、原価率は30%とか40%だったりするでしょう。これが正当な報酬よ」

「だが、しかし、俺は定食ビジネスをやりたいわけじゃ……」


 テツヤが渋っていると、そうだ、とマナカが手を鳴らした。


「結城くんって、テレビゲームはできますか?」

「まあ、一般人くらいには」

「じゃあ、私と一緒に遊んでくださいよ。お姉ちゃん、テレビゲームがものすごく苦手で、はっきりいって対戦相手にならないのですよ。ボコボコに痛めつけたら怒るし。だから、結城くんがバイトとして、1時間くらい私の相手をしてください」


 ダンッ!

 その発言を受けて机を叩いたのはレイ。


「いってくれるじゃない。よくも姉をおとしめるようなことをベラベラと」

「え〜、でも〜、お姉ちゃんがゲーム下手っぴなの、事実だし」

「聞き捨てならないわね。あれはコントローラーの不具合よ」


 レイが怒るってことは図星なんだろうな。


「結城くん、私からもお願い。このクソ生意気な妹を潰すのに力を貸しなさい」

「それ、本気でいってる? 2人で束になって挑んでも、負ける未来しか見えないよ」

「正義は勝つって言葉を知らないの?」


 いやいや。

 氷帝様は、どっちかというと、悪サイドの存在なんだよな。

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