第5話「とある男の意地―真視点―」

南雲 真なぐも まこと視点です。


日野と現大聖女とも言われる教皇猊下が出発してから次の日、俺は先生と一緒に訓練を受ける事にした。


そんな俺や先生に対して騎士達は皆気を緩める程歓喜していた。


「貴様ら!勇者様たち御一行が居るからとは言え気を緩めるなよ!」


騎士達

「・・・っ!!!はいッ!!!」


騎士長であるリンドさんの怒号によりその場で気を緩めていた騎士達は皆、再度気を引き締めた。


何にせよ一部の戦闘狂である魔族との交戦だから気を引き締めるのは仕方ないが・・・


「先生、何か・・・ぎこちないですね」

「・・・そうだな、私も教師をする前はあんな感じだったなぁ」


俺や錬達の担任の先生でもある勝浦先生は少し教師になる前の若い時代の思い出を感傷に浸った後、俺と一対一サシで訓練した。


俺は魔導師とは言え武力が弱けりゃ自分の身を守るよりも仲間を守れないと思ったからだ。


「私はてっきり君が【剣豪】か【剣聖】か【剣帝】になると思ったんだがな」

「流石にそんなに欲張ったりはしないですよ、錬から言われたんです。『何事も苦労から始めてそして必ず"恩のある報いが来る"』って言われてたんで」

「そうか、頼もしいな」


事実、俺の実家は剣道もやっていて親父は特に厳しかった。


ただそれは剣道のみだ。


父からよくこう言われていた。


真父

『いいか?真。お前に剣の道を教えるのは大切な仲間を・・・大切な友や大切な人の為にあるんだぞ』


そう父親から教わり今の俺がいる。


不慣れで不得手な事は誰よりも人一倍努力し、頑張って来た。


でも、俺が唯一敵わないのは――――


副騎士長エリーゼ

「やっ、お疲れさん。魔法もそうだけど剣技も一流だね」


そう俺に声をかけて来たのは副騎士長のエリーゼさん。


彼女は騎士長であるリンドさんとの一騎打ちに唯一ついて来られる人らしい。


「今の俺じゃあまだまだですよ。それに・・・」

「それに?」


彼女がのぞき込んでくるが・・・俺は苦笑いし


「今の俺よりもさらには騎士長よりも強い奴が居るって言ったら・・・どうします?」

「へぇ~それって私よりも?」

「エリーゼさんやリンドさんよりも強い奴は居ますよ」


そう言って背後から眼鏡っ子の錬金師アルケミストとして他の人達から絶大に人気を誇る玲子が来た。


「成程、リンドさ~ん」

「何だ~?」


エリーゼさんがリンドさんを手招きで連れて来た。

エリーゼさんから話を聞いたリンドさんは頷き


「ふむ、是非ともその御方と手合わせして貰いたいな。皆が圧倒する程の才能に長けているマコト君よりも強いのだろう?」

「勿論、ただこの世界に居るかどうかは知らないんですけど・・・」


鍛錬をしていた騎士達も俺や先生と玲子の下へワラワラと集まり


「名前は 信楽 錬。俺等四人はレンって呼んでいるんです」


俺がそう口に出すと一人の俺と玲子程と同じ年代の若い騎士が来て


騎士レビノ

「その『レン』って名前の奴、俺知ってるぞ?」


「本当か?!」


俺の差し迫るその気迫に圧倒されたその騎士は何度も頷き


「そう名乗っていた君ら二人と同じ青年が俺ともう一人の門番が居た時にをしていた時に銅貨で門を潜ってな丁度ギルドの受付嬢の嬢さんと他の冒険者の二人と一緒に入ってったな」

「あ~すれ違っていたか、もしかして」


レビノさんと言うその人はイヤイヤと言い


「俺は元々別の国の騎士でな、ここに来たのは協定を結んだ他国同士での合同訓練なんだ」

「・・・と言う事は隣の王国にアイツが・・・こりゃー願っても無いチャンスだッ!せんせ―――」


もっと強くなろうと先生に声をかけたが途中で玲子に力強く肩を掴んできて―――


「時間も時間、今回は此処までよ」

「おっ、おう。スマン」


俺はビビってそう言う。


鍛錬を続けていた為すっかり忘れていたが、もう既に夕方だ。


「―――成程、レイズ帝国も今は魔王の一部の配下による襲撃に備えてラノガ商業国とアスト王国とガーディン小国とブルード獣人大国とで今は合同を」


ウェリーシア・グロリアス第一王女

「えぇ、私達の居るグロリアス王国もその合同訓練に加わらせて貰っているんです」


夕餉時ゆうげどき、特別に王族の方々と特別に食事をさせて貰っていた。


ドノン・グロリアス第一王子

「―――と言う事で私の師範になって貰いました。父上、もしかしたらこの世界で最も一人だけですよ」


「大袈裟ですよ、ドノン王子。私はただ自分なりに改善点を申し上げただけなので」

「ふむ、ならレイコ殿の説明できる範囲で良いので合同での研究員たちを集めて何度か講習会?とやらを催してくれないか?」


玲子も玲子で皇子達の関心の音を掴み取ったらしい。


「―――と言う事で元は親からの教えを受けながら私のような教師もあの子等を指導して将来に備えての授業を―――」


ヴォンス宰相

「成程、いやはやこれは是非とも我が王国に導入せねば」


先生は宰相さんとやらと教育方法について教えていた。


「この国ではそう言った制度を設けていないので?」

「それがですね・・・一応学校はあるにはあるのですが・・・なんせ皆様のような使者である方々の居る所とは違って貴族制度が激しいので」



・・・この世界の学校も学校で苦労してんな、マジで。


「ふぅ・・・まだまだ足りない、力を付けてまたサシ勝負せねば・・・」


まだまだ何度も苦労が来そうだ。


食事を終えた俺は歯を磨いて用意して戴いた部屋を利用して先生の向かいの真正面にあるベッドで寝る事にした。


「よっしもう数本打ち込みはじめ!」

「「ハイッ!!!」」


翌朝、いつもの様に打ち込みを始めた。

即日なれるモノでも無いから覚えるのに一苦労だ。


「(アイツは俺よりも数センチ・・・いや数メートル先に居ても中々追い付けない。あいつを超える事こそが目標なんだ・・・!頑張らないと)」


俺はそう考えながら剣技や打ち込み、他にも様々な訓練を受けながら傍らで魔法の訓練もしている。


魔導団団長ノーク

「ふむふむ・・・・記憶力が良いですな、身体にし染み込んでいる為、適度な調節もこなしているので私からは何も言う事無いですね」


下級から中級、中級から上級へと結構魔力を消費する訓練は結構きついが大した事は無いと思えた。


この世界では魔力が減れば減る程に力が付き、さらに魔力が大幅に増えて回復し、その日よりも数倍に膨れ上がりその魔力を保有できるのだ。


「ふむふむ、大体のやり方はこれで一通りですな、超級の魔法については来週辺りに学ぶとしましょう」

魔法に長けている魔導団団長はそう言って俺に合格を言い渡した。


「ご指導ありがとうございます~」

「ついでに今回はゆっくりと御教養下さいませ。私は他があるので、それでは」


団長のノークさんはそう言って笑顔でその場を去った。


因みにあの人、王子の居る研究室の教える側だったりする。


「・・・玲子の方が上だとすると相当あの人ライバル視するだろうなぁ」


俺がそうつぶやくと――――


「そうね、実際に私の知識に負けて認めてたわ」

「マジか、早くね?」


飲み物を差し出しに来てくれた玲子がそう言う。


「んで?後々どうだ?」

「そうね、私が教える事も無く研究生の人達は熱心にやっているわ、それにあの王子も才能があるのにもかかわらず女の子そっちけなのよねぇ」


・・・・マジか、あの王子


「顔の出来が良くても人一倍努力しているのはだいぶ違うけどね」

「おーい、そう言いながら俺の顔に指で突くの止めて貰って良いか~?」


俺が白けた顔をしているのを玲子が指でツンツンと突っついて来るので軽く払らう。


「そう言えば・・・小説とかでありがちな展開とかは来なくて良かったわ」

玲子がそう目をひそめて言う。


「あれか?どこぞのの国の勘違い野郎が良い寄って来るとかそう言うテンプレ展開?」


俺がそう言うと彼女は呆れ顔で溜息をして


「女の子でもそれだったら結構きついわよ?」

「そうだな」


そうお互いに苦笑いする。


そう言えばこの国の王子って婚約者居るのか・・・?


そう思った俺はその足で宰相の居る執務室に足を運んだ。


「えぇ、居ますが未だに忙しい身で双方共々会いに行けないのです」

「ん~そうなるとどちらか片方冷めちゃいそうでヤバそうだなぁ」


俺は良いことを思いついた。


「その婚約者であるお嬢さんもご一緒にこの研究室でやられては?無論、無理にとは言いませんが」


そうアドバイスをすると、どこからか聞いていた国王がひょっこり現れて


「ふむ、私にも思いつかん発想だな、よし・・・早速、息子に相談するとしよう」


国王が去り際に「ありがとう」と俺に礼を言ってその場から立ち去った。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る