第45話


トールの提案により即席で作られた堀は、モンスターの死骸で埋まってしまい意味をなさなくなった。


その結果、堀を超えてたくさんのモンスター

が侵攻し、冒険者たちは苦戦を強いられる。


防衛戦は絶望的な状況だったが、『彗星の騎士団』のガレスとソフィアが駆けつけたことで戦況は一変する。


「エクスプロージョン!」


「ギガント・ファイア!」


「コロナ・ボール!!」


ドガァアアアアン!!


ボオオオオオオオ!!


ジュワアアアアア!!


「「「うおおおおおお!!!」」」


アルトの支援魔法で強化されたソフィアの魔法により、爆散し、焼き尽くされ、溶かされるモンスターたち。


その威力に、冒険者たちからは雄叫びが上がる。


さらには…


「うおおおおおりゃああああああ!!!俺だって負けてねーぜ!!」


モンスターの群れの中へと飛び込んでいったガレスが、その大剣でモンスターを蹴散らす。


アルトの支援魔法によって身体能力が強化されているガレスの一撃は、一気に10匹以上のモンスターを屠る威力があった。


ドガアアン!


ボゴオオオン!


凄まじい衝撃音と共に、みるみる数を減らしていくモンスター。


さらに、そこへ、アルトと別れたエレナも合流した。


「私もっ!!はあああああっ!」


ヒュババババ!!


目にも止まらぬ速さで細剣が繰り出され、近くにいた数匹のモンスターがバラバラに切り裂かれる。


根本的な速さが違うためにモンスターは反撃もままならず、エレナに一方的に蹂躙される。


3人の活躍により、状況は一気に冒険者優勢へと傾いた。


「俺たちも続けええええ!!!」


「うおおおおおおおおお!!!」


彗星の騎士団に勇気づけられ、冒険者たちは最後の力を振り絞る。


そんな時だった。


「え?」


「あ?」


「は?」


あちこちの冒険者からそんな声が漏れた。


皆、唖然として立ち尽くする。


「モンスターたちが…」


「止まった…?」


先ほどまで街へと侵攻していたモンスターが突如、動きを止めたのだ。


一瞬、あたりに静寂が訪れる。


ドドドドドド…


その後、止まっていたモンスターたちが再び動き出した。


だが、今度は街へではなく、森の方向に向かって進み始めた。


まるで統率された軍隊のような動きに、冒険者たちが戸惑う。


「何が起こって…?」


「モンスターどもが、森へ…?」


冒険者が首を傾げる中、モンスターの群れはどんどん離れていった。


しばらくして、あちこちから歓声が上がった。


「なんかよくわからんが、やったぞおおおおおおお!!!」


「街を守り切った!!!」


「はっ!!モンスターどもめ!怖気付いて逃げやがった!!!」


「いや、モンスターにそんな知能があるとは思えないが…しかし、助かった…」


あちこちで安堵の息を漏らす冒険者。


そんな中、『彗星の騎士団』の3人が合流する。


「ガレス!ソフィア!」


「エレナか!」


「間に合ったのね!」


先に戦闘に参加していたガレスとソフィアの元に、エレナが駆け寄った。


「エレナ。アルトはどうした?」


「うん、それがね…」


エレナは、ガレス、ソフィアと別れてから森の中で起こった出来事を二人に話した。


「何!?魔族が森の中に!?」


「その…魔石を体内に秘めた少女とは…一体なんなのよ?」


エレナの話に驚愕する二人。


あまりに突拍子もない内容だったが、しかし二人はエレナの話を信頼した。


「それで…アルトはその少女を魔族から衛ために森に残ったんだな?」


「そうなのよ。もしかしたら、モンスターが突然森の中に帰ったのも、アルトのおかげかもしれない。何か考えがあるって言ってたから」


「あり得るわね…その少女から取り出された魔石が、モンスターを生み出していたのでしょう?だったら、モンスターが突然森を目指したことに、その少女とアルトが関わっている可能性も大いにあるんじゃない?」


「ともかく、森へアルトを探しに行く!もしかしたら魔族と戦いになっているかもしれねぇ。あいつは近接戦も得意だが…流石に魔族は荷が重いだろう」


「そうね。魔族は魔力量も身体能力も人間とは桁違いよ。アルト一人じゃ危険すぎる」


「もちろんよ!早く助けにいきましょう!アルトは私たちの仲間なんだから!」


3人は互いに頷き合い、勝利に歓喜する冒険者をその場に残して、森を目指し走った。




  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る