第36話


『怪しい気配』の正体を突き止めるために、ガレスたちと別れた俺とエレナは、街付近の森を彷徨う。


「おかしい…この辺りなんだが…」


俺は周囲を見渡す。


確かに近くから『濃い魔力の気配』を感じるのだが、なにも見つからない。


「ねぇ…おかしいわアルト。ここ、ついさっきまで私たちがいた場所だ」


「え?」


周囲を見渡してみると、確かに見覚えがある。


おかしい。


俺たちは一直線に進んでいたので、一度来た場所に戻ってくることなどないはずなのだが…


「なるほど…人払いの結界魔法か…」


俺はこの不思議な現象を説明できるある可能性に思い至る。


「え…?」


エレナがきょとんと首を傾げる。


俺はそんな彼女に結界魔法のことを説明する。


「魔法で結界を展開して、近づこうとした人間の認識を誤魔化すんだ。そうすれば、決して辿り着けない区域を作り出すことができる」


「そ、そんな魔法が…じゃあ、どうするの?」


「簡単だ。ディスペル」


俺は魔法を破壊するための魔法を使う。


「でぃ、ディスペルの魔法を使えるの!?」


エレナが目を丸くする。


「ああ。もちろんだ。支援職だからな」


「いやいや…普通の支援職は、ディスペルは使えないから」


「そうなのか…?」


「そうよ…ディスペルって、魔法に関する膨大な知識が必要だから、皆が敬遠して習得したがらない魔法でしょう?」


「まぁ、確かにいろんな知識は必要になるな」


ディスペルを使うには、対象となる魔法の知識がなくてはならない。


つまりこの場合だと結界魔法に詳しくなければ、ディスペルは発動できないことになる。


「ってことはあんた…もしかして決壊魔法を使えたり…?」


「もちろん」


「…」


「ん?なんだ、その目は」


じとっとした目でエレナがこっちを見てくる。


俺が首を傾げていると、エレナは「はぁ」と何かを諦めたようにため息をついた。


「まぁいいわ。それよりも、先を急ぎましょう」


「そうだな」


こうしている間にも、街がモンスターに襲われているかもしれない。


俺たちはいち早く『怪しい気配』の正体を突き止めるために、歩みを早めた。


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