第34話


ドドドドドドドド…


大軍の押し寄せるような足音が周囲を蹂躙する。


「来たぞ!!!」


「モンスターだ!!」


「お、多いな…」


街の前に陣を成した冒険者たちが、武器を構える。


数千匹のモンスターの大群が、街に迫りつつあった。


「勝てるのか…」


「多すぎだろ…こっちの人数は100分の一以下だぞ…」


「一人あたり100匹ぐらいは倒さなきゃいけない計算か…Bランク冒険者如きには荷が重すぎやしねぇか…?」


そのあまりの数に、冒険者たちが怖気付く中、徐にまとめ役のトールが前に出た。


「インビジブル・イリュージョン!!」


幻影魔法を唱える。


すると、急ピッチで掘られた堀が完全に周囲の地面に溶け込んで、視覚的にはわからなくなる。


「おおお!!」


「すげぇ!!」


冒険者たちからどよめきが上がる中、トールが鼓舞の声をあげる。


「狼狽えるな!私たちなら出来る!Aランクパーティーが到着するまで、この街をなんとしてでも守り切るんだ!!」


「「「おおおおおお!!!」」」


トールの言葉が、冒険者たちの闘志に火をつける。


間も無く、モンスターの大群と冒険者たちがぶつかろうとしていた。



 

ドドドドドドドド…


足音が大きくなる。


数千を超えるモンスターの大群が、街の前に陣取る冒険者たちの元へと辿り着こうとしていた。


「かかってこいモンスターども!!」


「蹴散らしてやる!!」


「街は俺たちで守るんだ!!!」


冒険者たちが堀の前に立って、叫び声をあげる。


ドドドドドドドド…


モンスターたちは、闘牛のように冒険者たちに向かって突進する。


そして…次々に堀の中へと落ちていった。


『ギエエエエエエエ!?』


『ギャアギャア!?』


『ブモォオオオオオオオ!?』


『キャイン!?』


落下の衝撃でモンスターが悲鳴をあげる。


すかさず、後方で構えていたトールが指示を飛ばす。


「火を放てええええええ!!!」


そう言うと、トールは右腕を突き出し、炎魔法を堀に目掛けて打った。


「ファイア・ボール!」


「ファイア・ボール!!!」


「ファイア!」


「フレイム・ファイア!!!」


あちこちで冒険者たちが堀に向かって炎魔法を放った。


次の瞬間。


ボォオオオオオオオオオ!!!


堀から巨大な炎が燃え上がった。


あらかじめ堀の底に撒いていた油に引火して燃え盛っているのだ。


『ギャアアアアアアアア!!!』


『ギェエエエエエエエ!!!』


炎の勢いはどんどん強くなり、モンスターたちの絶叫が響き渡った。


「「「うおおおおおおおお!!!」」」


作戦がうまくいったことで、冒険者たちが武器を掲げて雄叫びをあげる。


防衛戦の序盤は、トールの作戦のおかげで、一気に冒険者側に傾いたのだった。



  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る