第4話
「君たちが『英雄の原石』かい?」
あれからしばらく。
俺はギルドの一角で、パーティー『英雄の原石』の冒険者と思われる者たちの元へとやってきていた。
「そ、そうですけど…」
両手剣を腰に下げた、気弱そうな少年が前に出てきた。
「俺はアルト。臨時メンバー募集要項を見させてもらってな。俺をぜひパーティーに加えてくれないか」
「えええええっ!?」
そういうと、少年が大声を出して驚いた。
「あああ、アルトさんってひょっとしてあのSランクギルド『緋色の剣士』のアルトさんですか!?」
「ん?俺のことを知っているのか?」
聞き返した俺に、少年はガクガクと頷いた。
「ももも、勿論ですよ!だってギルドに一つしかないSランクパーティーのメンバーじゃないですか!!知ってるに決まってます!!」
「そ、そうか…なんかありがとな」
確かにSランクパーティーは各ギルドに一つしか存在しないため、冒険者界隈では広く名前を知られている。
だが、剣士や魔法使いなどの花形ならいざ知らず、俺のようなサポート職は意外とSランクパーティーに所属していても名前を知られていなにことが多い。
なので、このように見ず知らずの冒険者に名前を言っただけで驚かれるのは結構新鮮だった。
「ななな、なんでアルトさんが僕たちのパーティーに!?」
少年は、信じられないと言った表情で聞いてきた。
俺はちょっと恥ずかしながらも答える。
「実は…つい昨日Sランクパーティーを追い出されてな…」
「ええっ!?」
「それで、今新たなパーティーメンバーを探していたんだ」
「ななな、なんで追い出されちゃったんですか!?喧嘩ですか!?」
「あー…なんだろう…行き違い?というか…俺はパーティーのために頑張ってたんだけど、その頑張りがメンバーには伝わらなかったみたいなんだ…」
「そんな…」
少年は俺の話を聞いてちょっとショックそうだった。
その反応を見た俺は、なんだかちょっと申し訳なくなる。
と、見かねた隣の少女が、少年の頭をパシッと叩いた。
「ちょっと!ユート!あんた人様の事情に踏み込みすぎ!アルトさんに謝りなさい!」
「はっ…そうだ!あ、アルトさん、ごめんなさい…」
少女に言われ、ユートと呼ばれた少年は申し訳なさそうに謝ってきた。
「ごめんなさい、アルトさん。こいつ、『緋色の剣士』の大ファンで…」
「そ、そうなんだね…なんかごめんね…夢を壊すようなことをして…」
そうか。
ユートはSランクパーティーに憧れを持っていたんだな。
それが、こんな生々しい事情を知れば、がっかりもするよな。
本当にすまない。
「それで、その…アルトさん。どうして私たちの募集に応募してくれたんですか?元Sランク冒険者のアルトさんなら、引く手数多ですよね?」
まだショックから立ち直れてないらしいユートに変わって、今度はユートを嗜めた少女が聞いてきた。
「えっとそれは…単純に今臨時メンバー募集していたのが、今パーティーだけだったから、かな…」
「そ、そうですか…で、でも本当にいいのですか?自分で言うのもあれですけど…私たち、まだ冒険者を初めて半年も経ってない、馬小屋泊まりの駆け出しの雑魚ですよ?」
思いっきり自分達を卑下する少女。
俺は笑って答えた。
「いいんだよ、そんなの。俺はランクとか経歴とか気にしないから。教えられることがあれば教えるし…だから一緒に冒険に出ないか?」
「ふわぁあああああ!!」
そう言うと、さっきまで落ち込んでいたユートが顔を上げて目を輝かせた。
「あのアルトさんと冒険に出れる!はい!行きたいです!お願いします!」
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