第25話:結局、世界の女は男の奴隷になってしまうのか?。

賞レース一発目、新聞社主催の映画賞で父が主演男優賞を獲得した。

一面トップの父の勝ち誇った笑顔。

すげーフェロモン!。

やれやれ、元気なのはオヤジだけだ……。

ますます調子こいてる父は当然のごとく、本格的に私を芸能界に誘ってきた。

今度は手抜きなし、口約束じゃなく、なんと事務所の社長を連れてきた。

正式に契約したいと言う。

「お嬢さんがどうしても欲しいッ」

私は即答を避けた。

私らしくないが、今の判断力に自信が無い。

まあ、弱ってんだよなあ……。

大事なもんくしてばっかで。

それと、こんなに私も母も落ち込んでるのに、それをエネルギーにして自分をギラギラみなぎらせている父に対して不安定な嫌悪感もあった。

そんな父を見て己をかえりみたのか、母が一生専業主婦宣言をした。

もうバイトなどしないと父の前で頭を下げた。

無条件降伏である。

思うとこあったんだろうなあ、相当悩んだらしく、悔し涙を流している。

そんな母にトドメを刺すべく余裕で父がニヤニヤかます。

「あの弁当屋の会社には俺からび入れといたぜ」

「え……いつ……」

「君が失敗した翌日だよ。社長に女優の○○の宛名付きのサイン持ってったら喜んでたよ」

「なんで黙ってたの……?」

「言うと傷つくじゃん」

「!!!!ッ」

母が号泣する。

苦い涙。

ますます父はケケケと高笑いする。

私は茫然と立ち尽くす……。

負けたな……。

完敗だ……。

オヤジ……アンタ最高だよ。

私はその場から消えた……。


またまた父の映画賞が決まった。

どんどん決まる。

もう誰も父の快進撃を止められない。

ここ数日、だんだん父が怖くなってきている。

父は毎日のように「女優どうだ?」と聞いてくる。

軽く聞き流してるフリをしているが、実は余裕がない。

逃げ切れんなあ……。

ああ……このまま私は一生父に支配され続けるのか?。利用され続けるのか?。

でもそれも悪くないのかねえ?。

どうなの?。

これが男と女?。

いつまでたっても男性の庇護ひごのもとでセコい自由を謳歌しなけりゃならないってこと?。

いや、謳歌させられている自覚すらなく、野原のはらをマヌケな鼻歌かなでて陽気にスキップしろってか?。

冗談じゃないよ……。

イジなんて元から無いけど、こっちだって意志や决断力ぐらいあるワイッ。

って、あーあ、女ってヤだな……。

今回、つくづく思うよ……。


冬休みに入る前、新井渉がデートに誘ってきた。

ついに来たか。

いよいよである。

一応、OKした。

断る理由がなかった。

いよいよ処女卒業かあ……。

新井渉とエッチしようと思う。

よく分からない。

完全な妥協と惰性だせい

残務処理みたいなもの。

めんどくさいし、疲れてるから、ここらへんで痛いって一発血ィ流して終わるか……。

「いいよ」と言うと、新井渉はクソガキのように喜んでいた。

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