最終章 やっぱ〇〇な男にあげてえよなあ。

第24話:不公平だ、人間なんて。これ17歳・処女の感想です。

12月。

終わった……。

終わっちまった……。

バイバイってさ……。

CMの話が流れたよ……。

7千万円パー。

ゼロ円だよ0。

ブタだよブタ……。

はっきり言って落ち込んだよ……。

母はもっと深刻に落ち込んでいた。

7千万どころか、5千万すらもらえない……。

ショックだい……ってか。

ホント朝メシのど通らなかったよ……。

原因はやっぱり父のポルノ。

広告代理店が完全拒否を決断した。

あ~あ……。

取りあえず何かが終わったよね……。


ところが一人始まった人がいる。

そう、父である。

元気だねえ……。

年末の映画賞をどうやら独占することがほぼ関係者筋の情報で確定らしい。

総ナメってやつです。

AV女優の股座またぐらナメて賞もナメっぱなしって……人間、不公平だよねえ。

ここんところ父は毎日イケイケドンドンで映画誌のインタビューに出まくっている。

白と黒。水と油。清純派アイドルとベテランAⅤ女優。そして父と母娘ははこ

この「おちょくり好対照」が更に私と母を落ち込ませる……。

真面目にやってるのがバカみたいだよ、ほんと……。

母は先日の失敗もあり、父を責められなかった。

父は、これからジャンジャン仕事が舞い込むぞ、と大はしゃぎである。

そこに、こんな可憐な傷心少女を「責め地獄」におとしいれるような悲劇が……。

永山先輩が大会の決勝でコンマ02秒差で負けたのである。

これ、キツイ……。

先輩、これに高校三年の集大成としてけてた。

場所は代々木オリンピックプール。

0.02秒……。

ほぼ同時だった。

ホントの僅差。

見ていて肉眼で差はわからなかった。

百分の二秒。

ここまでくるとほとんど運みたいなもんなんだって。

悔しいだろうな、永山先輩……

永山先輩はプールサイドで人目もはばからず号泣した。

ドキッとした。

男の人の号泣って初めて……。

あんな筋肉隆々の体躯たいくの男性がカスミソウのようにさめざめと泣く……。

動揺した。ハッキリ言って動揺した。

私にとっては初めて、まるで親友が突然死したような強いショックで、

自分で自分をどうしていいのか分からないくらい動揺した。

半べそぐらいなら笑ってやろうかな、ぐらいの気持ちだったが、さすがにこれは気の毒だと思った。

生まれて初めて、同情というか、慈しみというか、母性というか、

なにやら理解しがたい今までにない複雑な感情に支配された。

私自身、男性の価値観が変わるぐらいの強烈なカルチャーショックだった。

でも、同時にちょっとうらやましくもあった。

今の私にはあれほど夢中になれるものは何もない。

そして、実際、なんにも夢中になってこなかったな。

私って女は……。

なんてっちぇッ……。

私は、永山先輩を尊敬した。

一方、新井渉のヤツは、雑誌に投稿したレコード批評が次席に入ったが、主席のヤツのパクリが判明したので繰り上げ当選で雑誌に掲載された。

それを自慢げに私に見せびらかせやがる。

セコいなあ。まるでお前の人生だよ……。

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