第6章 ゆれる処女、ふり回される処女、しばられる処女。まるでSMじゃねえか。

第19話:女の甲斐性って何なの?、聞いたことも見たこともねえよ。

10月。

芸術の秋。

って、ホントにスゴイことになってきたんだよッ!。

聞いてッ。

父の映画は成人映画としてすべり出して、順調にいっていたんだけど、何せR指定、

興行収入もたかが知れている。

ところが、なんと、

ヨーロッパの国際映画祭でグランプリを取ったんだよ!。

ホント!?。

ほんとにほんと!。

マジマジ!。

もう日本中大騒ぎよ!。

そんで、逆輸入ってことで再評価がうなぎのぼり。

客も映画館にめかける詰めかけるッ。

まったく、現金だねえ、日本人ってのは。

とにかく父の周りはお祭り騒ぎで、停滞していたCM交渉も本格的に再開。

父は、ついに7千万入る!、と連日大はしゃぎだが、これを面白く思わないのが母。

とうとう本格的に離婚を考え始めた。

父の事務所の社長に相談したんだけど「慰謝料だけでは食っていけない」とさとされたんで、いつものように引き下がるかと思ったんだけど、今回はどうやら本気。

大手チェーンの弁当屋でバイトを決めてきた。

やめといた方がいいのに……。

「彩ちゃん、ママの味方してね」

って私は父と母の板挟み。

本当に離婚なんてことになったらどっち付こう?。

父に征服されたくない私は今のところは母寄り。

でも、AV事件以降の父の積極性と母の消極性をの当たりにするたんびに心が揺れに揺れる。


 それから、母は毎日これみよがしに忙しく朝の身支度をして、例の弁当屋のバイトにいそいそと出かける。

この母の母による母のための一世一大の大決断に父はまったく反対を唱えなかった。

「ふうん。やりたきゃやってみろよ」

とニヤリと傲慢ごうまんに言い放つ。

プライドを傷つけられた母はむきになって土日までシフトを入れてくる始末。

お互いよくねえなあ、もう……。

慣れない仕事に、疲れもストレスも溜まる母。

父は当然シカトを決め込む。

予想通り母の家事はおろそかになる。

食事は手抜きになるし、洗濯物は溜まるし、買い物行けないから食材も不足する。

そんな母に父は

「いいよ、いいよ、掃除ぐらい俺がやるよ」

と余裕で優しく黙々と家事を手伝う。

これがまた母の神経を逆なでするのだ。

よしゃあいいのに、火に油を……。

だんだん中小企業の女社長みたいにせてギスギスしだす母。

もともと美人だが、近寄りがたい人間に変身していっている。

就労がいかに人間をむしばんでいくか……。

見せ付けられるとさすがに私も労せずにして金が欲しいなあ……としみじみ感じ入る。

働きたくないとは思わないけど、自分に合わないことはしたくないなと危機感を覚える。

この分じゃ父に付いた方が何かと楽なんだろうなあ……

って、こんな考え方をするからいつまでっても女がナメられるんだよ。

女だって経済的自立をすればいいんだ。

 でも、母は裏切れないよ。

食わせてもらってるのは父だけど、実質的にあらゆる生活面で世話になっているのは母だ。

学校のことから身の回りの世話から、それから初潮のときにだって……。

父は金を家に入れてAV女優と寝た。これは許されない。

でも、父の甲斐性!。

すごい!。

魅力的だ。

それから華やかな芸能界!。

ぶっちゃけ憧れる。

もう、どうしろって言うんだ!。

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