第5章 ロックな父とフォークな母とアイドル歌謡の私←ホントこれ処女。

第16話:そろそろ卒業、ナニの卒業。プレッシャーだよね。

9月。

結局、私の「プロデューサー大森幸平56歳へのロリコンおねだり作戦」をきっかけにして、父がねばりに粘った結果、

例の文芸ポルノの主演が正式に決まった。

あのパーティーの後、昔のフィルム『四畳半ふすま裏張うらばりり・しのび肌』と『一条さゆり・濡れた欲情』という作品を見せてもらった。

ぶっちゃけ感動したよ!。

この17の高校生が!。

純文学じゃん、これ!。

とくに『四畳半~』のせり明香めいかのセリフ

「男と女はアレしかないんよ」

には泣けた。

これなら父が出ても世間に対して堂々としていられると思った。

しかし、知らない人にはAVもロマンポルノも同じだからねえ……。

まあ、冷たい目にさらされることに変わりはない。

これだから完成するまでは私もまだ作品を信用できないんだが……。


それより、もう9月だ。

そろそろ『処女解脱げだつ』なるものの相手を決めなければ。

新井渉の猛アプローチも段々その露骨さに七色のドギツサが増してきて、そろそろ誤魔化し逃げ切れなくなってきたよ。

ああ、めんどくせ……。

もっとめんどくさいのがCM。

父の映画出演の情報が流れると、広告代理店がいの一番で自宅に突入してきた。

ポルノとなると契約は難しいと、スゲーあせってまくしたててきた。

酒やタバコのCMならいけるだろう、と父も粘ったが、譲らない。

頑固だねえ、大手企業っていうのは。

って言うかえらそうだよなあ、いちちち。

「映画と芝居が全国的に評価されたらどうするんだ、その時は寝返りさせないぞ」

と父がフォークボールを投げ込んだら

「様子を見ます」ということで妥結した。

ぬるい平行線だ……。

でも、やっぱり怖くなったよね。

あまりにも世間がポルノポルノって騒ぐもんだから……。

でも、騒がれれば騒がれるほど父は強気。どんどん先へ進んでいく。

そんな狂気の爽快運転を見ていると、何だかこっちも興味が湧いてきて、

ついには我慢ならなくなって、父に、スタジオへ撮影を見学しに連れてってくれ、と言ってしまうはめになったのである。

引っ掛かっちまったよな。

父に興味があったし、同時に、濡れ場を見てみたいっていう単純な欲求と、

本当にマジメにやってんのか?、というひやかし的な気分もあった。

現場の父の姿を見てみたい。

仕事している姿を見てみたい。

濡れ場ならおチャラケて誤魔化しはできないだろうから、その時の本当の父の姿が見たい。

でも、父に興味があることは死んでも悟られたくない。

なので、アドリブで、

「プロデューサーが誘ってたじゃん」

とはぐらかして頼んだら

「いいぜ、見に来いよッ」

と余裕で言いやがる。

悔しい。

なんかムカつく。

でも、とにかく興味があったので母と行った。

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