第15話:私が前へ進みたければ進みたいほど、処女って要らねえモノだな。

パーティーが終わって……。

母はディプレッションの泥沼にはまり込んで腰のあたりまでめり込んでいた。

「彩ちゃんはめいマネージャーね」

「ママが許してくれたからよ」

「これでCMも決まればいいけど……」

「ここでそんな話……」

「彩ちゃんがいっぱい居ればね」

「なにそれ?」

「彩ちゃんがやりたいようにやる彩ちゃん。パパの仕事をする彩ちゃん。そしてママの彩ちゃん……」

「悲しい言葉……」

「ごめん……」

「ずっとママと一緒よ」

「ありがとう……」

自分でも臭いセリフだと思ったけど私は私なりに精一杯母をなぐさめた。

でも、今の母には伝わりそうにないな……。

なぜなら私の心のどこかの隅の隅に

〝映画女優ってのも悪くないな〟

って思うおチャラけた自分が、みっともない薄ら笑いを浮かべて下品な踊りをクルクル舞い回っているんだから……。

会場を出るとき、遠方で何やらヒソヒソ話している父が目に入った。

オヤジ……りてないな……。

どさくさにまぎれて柱の陰でAV女優の浅野理央と話し込んでいた。

一応、写真週刊誌に載った時点で関係は終わったと説明は受けているが、何なのか……?。

別れの最後の清算でもしてるのか?。

花や言葉も要らないから最後にもう一発なんてね。

やりかねんな、あの二人なら……。

まったく困ったもんだね、男と女って。

恋愛アレルギーになりそうだよ。

でも、予想とは真逆に浅野理央は真面目な涙を浮かべて父と握手をし、ペコペコ頭を下げていた。

父は優しく浅野理央の肩をさすってやり、言葉をそっと渡していた。

終わったようだな……どうやら……。

終わってくれないと困るよ、もうッ……!。


翌日、パーティーの興奮冷めやらぬうちに私は新井渉に、デートに誘われた。

「新宿の輸入中古レコード店に行こう」

って。

冴えないねえ……。

でも、業界の酒臭いパーティーで食傷しょくしょう気味の私にはいいリハビリかなと思い、付き合うことした。

が、突然、新井渉と新宿の街を歩いていると、永山先輩を目撃してしまった。

3年の女子主将と近く迫る大会の会場の視察にきていた。

すげーな、練習か……。

休日なのに……。

私、何やってんだろう……。

何だか初めて嫉妬しっと深いやるせなさに襲われた。

スポーツなんて徹底的にバカにしてたのに……。

先輩すごいな……。

「休日に練習なんてバカじぇねえのッ?」

と新井渉がコケにする。

バカはお前だよ、切ない……。

このデートも処女卒業の一環なのかねえ……?。

もしかしたら今日ホテルかも、なんて思ってたけど、もう絶対断ろう。

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