第4章 夜のパパはちょっと違う~、夜のパパは男だぜ!。ちょっと男を知る。

第12話:処女卒業指南?。AⅤ女優とごたいめ~んッ!。

8月。

今日は映画制作連盟という日本映画界の製作会社及びプロデューサーの年に一度の大パーティー。

芸能関係者千人近くがホテルの大広間にウニョウニョ入り乱れる「飲めや歌え」の超セレブ大宴会だ。

あっちもこっちもテレビや雑誌で見る顔ばかり。

権威を見せ付ける大御所から名前を売り込むB級モデルまで、南洋植物みたいな趣味の悪い華が咲き乱れる。

当然父も招待された。

現代日本映画界の売上功労者ということらしい。

まあ、いいか。

それで、母も呼ばれ、ついでになぜか私も付いていった。

ただ単にプラダのイヴニングドレスを着させてもらえる、という村上篤志の誘惑に不覚にも屈した。

だってドレス着たかったんだもん。

ゴメンね。へへ。

一応母の横に付いていたけど、父に付けばよかった。

だって、ママ、父のスキャンダルをプロデューサー連中に平謝りしてるばっかなんだもん。

それを尻目に父はニコニコ顔で若いC級モデルとシャンパン飲んでいる。

こんなとこで亭主の尻拭いかよ。

トホホ……やりきれんよ……。

一人、ジュースを飲んでいたら、若い女の給仕に声を掛けられた。

「アンタ、北島さんのお嬢さんでしょ?」

誰だ、こいつ?。馴れ馴れしいなあ。

「なに、アンタ?」

「あ・た・し。浅野理央ッ」

ナ、ナニーッ!!。

父が寝たAV女優・浅野理央28歳の登場である。

そのせつは父がお世話になりまして、ってバカ。と心の中でノリツッコミしつつ、話は本題へ。

「迷惑かけたね、エヘヘ」

「何しに来てるんですか?」

「バイト。AVだけじゃ食えないからね」

浅野理央は屈託なく10年来の友人みたいに言う。

わだかまりってもんがない。不思議な女だ。

「どうして父と?」

「映画で知り合った。私、死体役。裸要員ってやつ。そんで、警察の検視のシーンで前張り無しでやったら、気に入ってくれて」

「何で前張りしなかったの?」

「だって裸で呼ばれてんだよ。全部脱ぐのがスジじゃん」

「どんな付き合いしてたの?」

「私、劇団やってんだけど、そこにお金入れてくれたんだ。劇場代。ポーンと百万。でも、小屋代だけ。チケットは一切買わない。『客は自分たちの努力で呼べ』って。やられたね。ホレたよね、劇団員みんな……」

「パパも劇団あがりだからなあ……」

「そんで、絶対芝居観てくれないの。脚本ホンが悪いって。すんげー厳しい……。でも、分かってんだ、そこらへんが伸び悩んでるって。正直、言ってくれて有り難かったよ。それで、すみませんって、なんかよく分かんないけど頭下げたら、『いい脚本ホン書いたらタダで出てやる』って。カッコ良すぎるよね」

「そんなこと言う人なんだ……」

「でも、最終日にこっそりお忍びで来てたんだよ。そんで、バレないように帰ろうとしてたから、私、もう、どうしていいか分からなくてさ、でも、何もしてあげることなんかないじゃん、で、私、実家が中華料理屋やってて、私も中華料理作れるから、アパート帰って回鍋肉ホイコーローつくってあげたら『うまいうまいッ』て食べてくれて、そんで、もう、何て言うか……まあ……最後までいったよね」

「そんな人付き合いしてんのか、パパ……」

「そんな?」

「もっと大女優と不倫なんかしてると思ってた。豪華ホテルで……」

「金払い、いいよ。すごい気持ちいい。今、いいと思ったことには惜しみなく使う。なんか直感で生きてるって感じ。自分のひらめきを信じてお金つぎ込んでる。この業界ケチなヤツ多いからさ。だからよく分かるよ、アンタのお父さんとこに人が集まるの」

「豪快なヤツだったんだなあ」

「でもマメ!。やさしい!。それで若いね!。今、目の前の瞬間を生きてる。明日の事なんか考えてないもん。そこんとこが私と似てて、だから、結構気が合う。セックスも合うよ」

「あまり聞きたくないなあ……親のそういう話……」

「大事なことじゃん」

「そりゃそうだけど……」

「女に恥かかせない。引っ張ってくれる。何とか気持ちよくさせようとする。かわいいよね。だから、女の人、嘘でも『気持ちいい』って言ってやりたくなる。モテるよね」

「そんなもんなの?。セックスって?」

「すごい努力して頑張ってくれる。ガムシャラに私の身体にぶつかってくる。ウソが無いから終わったあと何か不思議な爽快感があるんだよ。イかなくてもこの人と寝て良かったって心底思うよ」

「ふううん……」

って、パーティーの席で何話してんだろう、私?……。

でも、父の知られざる男の部分だよなあ……。

初めて知った。

父親の性の話なんて一生知らない人もいるだろうから、まあ、貴重なご意見を拝聴はいちょうしたのかねえ……。

そう言えば父の言葉には裏表がない。いつも真っ直ぐ。

そんで速い。軽妙だ。

今日の私のドレスを真っ先にめてくれたのも父だ。

「ウエストラインを出さないのは正解だな」

と私がこだわっていた点をかれたときはドキッとした。

まだ成長過程で腰のくびれが出来ていない寸胴ずんどうの私は、ウエストラインが出るドレスをわざと避けたのだ。

これにはビビったよね。

そして、車を降りるときもドアを開けてエスコートしてくれた。

私を一人の女として扱ったよねえ。

マメだよなあ……。

ゾクゾクッときたよ。

でも、素直に認めたくねえよなあ……。

なんか腹立つよね。

悔しいッ……。

あまりに開けっぴろげな浅野理央に私は処女のことを聞いてみた。

「やっぱ処女あげる相手って、選ぶべきなの?」

「さあ、私、初エッチ、10歳だったからなあ……」

「ええええええーッ!!」

「相性だよ。終わって感動があるヤツとやった方がいい」

「感動……?」

「終わってムカつくヤツもいるからね。でも、本当に上手くいった時の凄さはハンパないッ。今まで仕事で700人とやったけど、人間はお互いを完全に理解して認識し合うことなんて不可能だよ。でも、たまに奇跡のエッチがあるッ。最高の瞬間。それは本当に生きててよかったと思う。だから、それを信じてやるよね。その奇跡を追い求めて今日のエッチに励むよね。そんでいいんじゃない?。だから、自分の感覚で『こいつとならうまくいくんじゃないかなあ……』て思ったヤツとやった方がいいよ。頭で理屈こねて損得考えるとたぶん失敗する」

「ふうん、そっか……」

「ゴメン、なんか、上から目線だね、エへへ」

「ううん、そんなことない。アハ、私が処女だって誰にも言わないでね」

「OKOK!」

浅野理央は仕事に戻っていった……。

私は父を探した。

まだ、若いモデルと話している。

なんか嬉しそう……。

腹立つ……。

その父を、複雑でもの欲しそうな、申し訳なさそうな、でも腹立たしそうな、でもでも何も言えずにひれ伏すしかない目線で母がじいーっと見ている。

その母を気の毒に思いながらやるせなく見るしかない私……。

そしてグルっと回ってそんな私の気持ちなんか理解しようともせずひたすらC級モデルと話し続ける父……。

結局、この世の中、モテる男が一番エライってか!。

そんなもんかよ、世間なんて……。

繰り返すが、やっぱり泣ける……。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る