第22階 おまじない

 「ハツミかー!!!」


 私は皆が集まっている場所に帰って来た。

 そんな私に向かって飛び込んで来たのはマスカリアだった。


 「あら、まだ夜なのにお揃いね」


 私は周囲を見回した。

 私の親愛なるマスカリアにマテハ、マユナ、イム。


 集まった地の主、カゲードさんと倶全君。


 三竜王のアルテンさん、倶天さん、ドゲートさん。


 星一族の王族、全天さんにクラーガとミリフィムちゃん。


 そして、神ハツミリム。


 「私軍も含めていつでも出られる様に全軍待機させてある」


 アルテンさんは強く言い放った。


 「神々が集結している」


 倶天さんも真剣な表情だった。


 「えぇそうね、だってミリカンテアと神々の世界を隔てるメイユールの地が滅びたもの

あとは全軍で雪崩れ込むだけよ」


 「「「「「!!!!」」」」」


 私の言葉に皆驚いていた。


 「チッ!!何だよ!!」


 クラーガが私を睨んでくる。


 「あら可笑しいわね、"神々の夢"が出現しなければ神々の世を塗り替えられたのではないの?」


 私は笑って返す。


 「侵攻してくる軍に対してはアルテン軍と全天軍で挟み討ちが妥当かと思われますが...」


 マテハが呟く。


 「仕方ないな...」


 全天さんは半ば諦めている。


 「結局オレ様達の軍を"使う"って事だろうがよ!!!!」


 クラーガは今にも飛び掛かって来そうだったけれど、ミリフィムちゃんが抑えていた。


 「あは!あはははははは!!!」


 私は抑えられず吹き出した。


 「何が可笑しい!?」


 ハツミリムが怒っている。


 「だ・か・ら、何処まで私を見くびれば気がすむの!?」


 私は全員を睨み付けた。


 「ハツミ...?...」


 マテハが小刻みに震えていた。


「そうね!軍を"待機させている事"は必要よ!!

 自分達の地に神々を分散させずにこの"ミリカンテア"に神々の全軍を集中させる為にね!!

 メイユールも生かした甲斐があったわ

ちゃんとこの地に私が思う強者が全て集ったもの!

 私の姉と神ハツミリフィを除いてね!!!」


 皆が皆を見合わせていた。


「その後どうするんだ?いくら魔皇様といえど闇と星と龍の全てが集っているから神々を打ち倒せると御言葉を貰っていたし、実際神々の戦力を考えるとそう言える。

 それにクラーガ...軍の決定権はお前に与えたつもりはないぞ」


 全天さんは現実を飲み込んでいた。

たとえ全軍で出るとしても覚悟を決めた表情をしていた。


 「あーっ分かったよ親父...」


 クラーガは押し黙るほか無かった。


 「ミリカンテアの守護は私の可愛いマスカリアとマテハ、マユナ、イムがするわ。そう頼むつもりよ」


 マユナは苦笑して、


 「そのつもりで構わないわ。でもハツミは?」


 皆の視線が刺さる。


 「私は神界に殴り込んで力のある神を削る。

 そこは心配する必要全くないから順に残りの7柱をGAME OVERにする」


 あまりに私の発言が突飛だったのだろうかな、空気がはりつめる様な感覚を受けていた。


「あははははは!!!何だよそれ無茶苦茶だな!!!オレ様よか強いんだぜ?」


 クラーガが嬉しそうに勝ち誇った笑みを隠さなかった。


 「雑魚に興味無い」


 私はクラーガに言い放ってあるモノを置いた。


 重さが地面にのしかかる確かな音が響く


 「それは神シアの宝剣」


 ハツミリムは震えていた。


 「納得頂けるかしら?神々が怒り狂って全軍出す、理由はこれよ。

こんな物を持ち歩いていれば直ぐに分かるでしょう」


 私は笑みを崩すつもりはなかった。


 「まさか、こんな日が来ようとは」


 驚いているドゲートさん。


 「.......!シア軍は神速の機動部隊、それに加え精鋭揃いの手練れ揃い。

 シアと一騎打ちなら遅れを取らんが、破壊神たる戦闘の狂神の名は伊達では無いがこの剣は本物か...」


 全天さんが宝剣をまじまじと睨んでいた。


 「おい...マジもんかよ!」


 クラーガも唖然としていた。


 「私の頭はお花畑では無いわ。

 私はアオナ・エカルラートだけどもキレ・ルイデの娘でもあるハツミリア・ルイデでもあるの。

 強さに感しては自信があるわ、その分生意気だろうけど」


 私は安心させるために皆へと微笑んだ。


 「何も言うまい...任せよう、なぁアルテンよ!」


 アルテンさんと全天さんは肩を組んでいた。


 「ハツミのお父さんが敵になる可能性は?」


 イムが空気を切り裂いた。


 「父にとって神の方が比重が高いとは全く思わない。

 それは安心して欲しい」


 そうなの?と皆は笑っていた。


 「この地に集めた理由を今から行うわ。

 私は貴方達には死んで欲しく無いから、よって私のおまじないを使う。

 必要ない者は是非言って欲しい、特に構わない」


 皆目を見合わせて頷いた。


 「それでは使うわ」


ーー芒星


 「.........」


 「何が起こったんだ?」


 倶天さんが首を傾げている。


 「私の瞳の奥を見てくれるかしら?五芒星が見えない?」


 何人かが覗きに来る。


 「あぁ見えるぜ!はっきりとな」


 その内の1人であった、クラーガが嬉しそうに答える。


 「皆にも刻まれた筈、そして少しだけ強くなっているはず、それだけよ」


 皆それぞれの目を見合っていた。


 「お兄ちゃんとお父さんと私は六芒星ね」


 ミリフィムちゃんが笑う、全天さんがそれに呼応する様に嬉しそうに微笑んでいた。

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