第21階 偉大なる超越者の死

 魔皇も私も分かっていた。

 わざわざ炎の最上位虹魔法ミカティメットを食らってまで行使した魔法は必殺の宇宙墜としこと『フォールンコズミック』だった。


 空間が裂ける様な星のざわめきと重い力が魔皇目掛けて降ってきていた。


 「受け取って欲しい...私のすべてだ...仲間達と共に生きた、何もかもを詰め込んだ。

 もう何も残さない、私は仲間達の元へ旅立つ。

 魔皇ミラース・ラーバ・ラーサ、もし願いが叶うなら私は貴方様の家族になりたい」


 力が迸る中メイユールは全てを悟った笑みをしていた。


(「あぁ!!そうだな!!!息子にしてやるぜ!!!!で、クソみたいな親子喧嘩でも

しようじゃねぇか!!!!!」)


 魔皇もメイユールも泣きながら笑っていた。


 殺伐とした穏やかな永遠ともいえる時間は少しずつ過ぎていった。

 力が集約する、魔皇にメイユールの魂を賭けた全て。


 (「ハツミ...ありがとう...俺は自分の世界で本来の宗茂 斗羅として生きるよ」)


 (「そうね貴方は"半転生者"だものね)


 お別れか。

少しだけ名残惜しかった。

色々と助けて貰ったから。


...


......


.........


 「やはり、通用しなかったか..」


 それでもメイユールは微笑んでいた。

 メイユールには半分の骸骨の顔ぐらいしか残っていなかった。

 最期の魔法に相応しい輝きを放ち切ったとも表現できる。


 「アオナ・エカルラートよ、私は仲間を理由にお前の世界に侵攻した。

 あの様な世界と知っておけば私は友好的に進めるべきであった。全く愚かで無知だった」


 「えぇ、その点はそうね」


 私の言葉に苦笑していた。


 「新しい神の世界の誕生に私は怯えていたのだよ。何処かでな。

 それを仲間達は汲み取っていた。

 新しい神と優族に何か対策を講じたつもりだったが過信していたな。

 弱く新しい世界なら神も弱いと奢っていた、"真の勇者"がいたなんてな。

 負けて愚かだった私が言うのもなんだが、

誇っていいぞ。


 私を殺した事を。


 私がしてあげられる些細な事だ。

 私の"名"にどれだけの価値があるか分からぬが、メイユール・ウェ・ミールを打ち滅ぼした者としてこの杖を受け取ってくれ。


 仲間達と共に作った最高の宝だ。

 強い訳ではないが怨みが残っているなら

叩き壊せばいい」


 ふふふ、本当に馬鹿ね


 「貰っておくわ。強く成る為には清濁全てを飲み込む必要性があるのよ。

 滅ぼせて良かったと思っているけど、それとこれとは別よ」


 メイユールは穏やかに笑った。


 私は受け取った。

 大切に大切にその杖は光に包まれていた。


 「働いてくれた分の報酬をあげてはいなかったわね」


 構わぬぞとメイユールは力無く呟いた。


 「もし、もう一度仲間含む全てが生きたいと思うなら転生出来る様にしておいたわ。

 同じ場所にね。

 ただし私は悠久の時に座するから悪い事したら即GAME OVERにするから」


 メイユールは頷いた気がした。


 「すまぬ、それに見合った働きをしていない...」


 「もう一度いつか生まれ全ての借金を返済なさい。

 途方もない額をつけておくから」


 消え逝く笑みを浮かべるメイユールは私に最期の言葉を投げかけた。


 「アオナ・エカルラートの大切な全てに幸が訪れん事を私は願い続けよう」


 と

 メイユールが消えメイユールの強さと強大さの象徴だった世界は消えていった。

 この事は神々の世に瞬く間に伝わっていった。

なにせメイユールの座していた世界が消滅しその場所に空間ともいえる大きな穴がぽっかり空いたのは力ある者達にとって明白な事実。


 神々は偉大なシアが総てをかけて滅ぼしたと報告したが一部では特にエルフ達には勇者誕生の噂が流れていた。


 それならそれでいい。


 私はメイユールの名も使い神々への復讐を大義名分として神々の世界へ侵攻するだけ。

 そしてアカナをGAME OVERに追いやった神々の首を斬ればいい。


 私は大きな力が、ある場所に集約するのを感じながらカゲードさんが座する地に辿り着いた。

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