第20階 決戦メイユール・ウェ・ミール

 星一族の王地で夜を越え、私は翌朝5人と或天さん、そして全天さんに1日だけ待って欲しいとお願いしたらもう1日飲んでくれるみたい。

 魔皇軍は揃いも揃って酒が強い人々ばかりらしい。

 酒気を帯びた状態で来て欲しく無い事だけ殺意を持って伝えておいたら苦笑していた。


 私が1日貰って行きたかった場所は2つある。

まずは私が生まれアカナ・エカルラートの妹になった和泉国。


メイユールには表舞台に立たずに和泉国を支えて欲しいとお願いしていた。

 既に和泉国にはおらず私は手紙を渡された、メイユールからの手紙を。


「許せ...アオナよ。我が愛おしい部下の1人であるケサラコロスより我が地の危機を知らされた。

 我が身を気遣って自分達だけで対処すると、私に心配をかけたくないと記載があった。

 私の処罰は幾らでも我が身で受けよう。

願わくばそなたの怒りの矛先が我が親愛なる我が仲間に向かわん事を」


 と綴られていた。

私はいえ、魔皇は手紙を握り潰し感情を噛み潰していた。


 私は、私達は早速メイユールの地へと向かった。

 空は思いの外、澄み切っていた。

あまりにも静かで、あまりにも静寂で、あまりにも穏やかだった。

 その地はメイユールしか訪れる事が出来ない様に細工は施されていた。


 そしてそこには憎悪と悲しみに燃やすメイユール・ウェ・ミールがいた。


 私はこの地を襲った神の1柱であるルーとその配下と戦う前に、メイユールの仲間達を安置して置いていた。

周囲に花々を生やして。

 メイユールの6名の仲間達は静かに安らかに澄み切った表情をしていた。


 「......なぜ...これ程の......痛みを受けた......戦闘不能に陥って......更に攻撃を受けた後まで......」


 私も魔皇も分かっていた。


 こんな現実は当事者に認められる訳がない事を。

 言ってしまえばメイユールは私の姉アカナ・エカルラートを死に追いやるきっかけを

作り出した元凶でもあった。


 ただ、私は何もする事はしなかった。

メイユールに暖かい言葉をかけてあげるつもりも、励ましてやるつもりも、気持ちを汲んであげるつもりも。


 私は首を1つ置いた。

身体は別次元で捉えたままだけど。


 「この地を滅ぼした元凶、神ルーの首は狩った。今も苦しませている、簡単に滅ぼす気はない」


 私は淡々と事実を述べた。


 「きょ...あ?......べりょ」


 神ルーから発する言葉は最早意味をなさない。

壊れた者の言葉だからだった。

 神ルーの目は明らかに死んでいた。


 メイユールは一時的な配下、私の利害と一致したため神ルーを壊した。

 メイユールの地に存在していた、力を持たない者達への神々の対応に全世界の危機を感じたからだった。


 「うおおおおおおおおおおおお!!!!!!!!」


 メイユールの咆哮。


 そして姿が変わっていく。

力が集まり結合し統合されていく。

 そこには黒い漆黒の西洋竜が出現していた。


 もしメイユールがこの地に残っていれば

きっと助けられた命もあった。

 それを感じさせる程の力の集約だった。


(「...ハツミ?任せてくれ、僕はこいつを止める!!!僕の最初で最後の弟子を!!!」)


 魔皇としての仮面と黒いローブをみにまとい。


 「強くなったな」


 と魔皇ミラース・ラーバ・ラーサは呟いた。


 「魔......皇.........」


 (「あぁ、そうだメイユール、僕だ...お前に免許皆伝を与えていなかったな」)


 「うぐおおおおおおおお!!!!!!」


ーー空間超力

 私は1つだけ魔法を与えたこの地を傷付けない様な。


 (「ハツミ!感謝する!」)


 そう魔皇が言った直後の事だった。


 「「神の如き者...抜かれた剣の...東の火を...」」


 「「ミカエスト!!!!」」


 2人の詠唱が一致する。


 「ぐおおおおおおお!!!」


 炎と炎がぶつかり合い、激しく空間をせめぎ合い、時を蹂躙する。


 魔皇に詠唱はいらない。

しかし、メイユールに彼は魔皇は合わせて叫んでいた。

 仮面には涙が刻まれ溢れていた。


 (「嬉しいねぇ、僕が最初に教えた魔法は炎だった。神々と同等の次元じゃないか!」)


 「がああああああ!!!!」


 生きる意味を無くし、絶望の中で身を焦がす。

 メイユールは全ての力で惜しみなく魔皇に抗った。

 無意味で無慈悲な現実にすべてをかなぐり棄てて魔皇にぶつけてくる。


 「「神の敵対者!!憤怒の!黒き闇を!!」」

 「「サタエスト!!!!」」


 両者から漆黒の闇が溢れ出る。総てを飲み込もうと、そしてぶつかり合う。


 (「へぇ...やるじゃないか、メイユール...」)


 「光をもたらすもの、明けの明星の、輝く光を」

 「ルシエスト!!!!!」


 光が魔皇を包み込む、それは全てを飲み込む光となった。


 「神の如き者...抜かれた剣の...知性の火を」

 

 光に包まれながら魔皇は詠唱を。

言葉をただ綴っていた。


 「ミカティメット」


 「ぐああああああああああ!!!」


メイユールは絶叫を上げていた。先ほどぶつかり合った炎よりも明らかに強い。


 (「これで互いに食らったな、メイユール!!!」)


 「...はぁはぁ魔皇よ。我が最大の秘技をお忘れではないでしょうか?」


 メイユールの表情が安堵へと変わっていき空間が揺れた。

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