第14階 美しき地と燃ゆる栄華

 朝だけど少しばかり薄暗く、多少肌寒さが残る時間帯に私達はこの地を出る事にした。


 「行くのだな...」


 倶天さんは名残押しそうに声の大きさを抑えていた。


 「えぇ、行くわ!或天さんの元へ」


 「そうだよな」


 と倶天さんは穏やかに呟く。


 「師!行ってきます」


 マユナはぺこりと頭を下げた


 「あぁ!無理をするなよ?」


 その強い口調はマユナの事を気に掛けている。

 そんな気持ちが如実に表れていた。


 「はい!」


 マユナはにっこり微笑んで応えた。


 私達は倶天さんと別れた。


 目指すは超位四種族の一つに数えられる龍

《ろう》一族の元へ。


 「龍一族は武も得意で後はブレスだね!」


 マスカリアが教えてくれる。


 「ブレスって炎の息とかそういうのかしら?」


 幼い頃に本で読んだ事がある。

お姫様を救いたい勇者がドラゴンと戦う物語を。


 「そうそう!その通りです〜!」


 「良かったぁ!」


 なーんて言って道中の会話を楽しんでいた。


 私達は道中は歩きだけども火や水に氷や光の様な自然へ身体を変化させられるから疲れないし、大人が走る速さよりも遥かに速い。

 選んでいる属性は"風"障害物もなんのその空だって歩けちゃう。

優雅に雲の上を散歩している私達でした。


 ちなみにイムとマスカリア自身は集然を使えないから、私がマスカリアをマテハがイムを変化させている。

 マテハは自力で使えるようになったと説明を受けた。

 マユナは師である倶天さんに基礎を叩き込まれたって苦笑していたし、倶全君は父のカゲードさんから教わったと聞いている。


 そして私達はこれからについても話していた。

 私は龍一族の王である或天さんに会った後に最後の超位四種族である星一族の王の全天さんに会うつもり。

 そしたらミリカンテアの地を任せて私は四姉妹を連れて神々の世界に殴り込みに行くつもり。

 その後は神々の出方によっては最悪神話で言うところの神々の黄昏を引き起こし滅ぼす可能性もある。


 なにせ神々はエンシェントルーラエルフをこの世からあの世に送った種族であり、更に新米の神様だったミリフィさえもこの地に生きられ亡くなった件についても血を流す事は避けたくない。

 私は善人では無いからね。


 散り散りになっているエンシェントルーラエルフ達やアカナが神々の首を狙っているとは到底思えないけれども、神々はエンシェントルーラエルフに手を出したら手酷いしっぺ返しを食うって事を知らなければならないと

私は神殺しを正当化してみた。


 「私は私自身を試したい...かな」


 マテハは口調とは違い戦う気満々な笑みを浮かべていた。


 「マテ姉に遅れは取れない」


 マユナも乗り気だのう。


 「私は妹達を放ってはおけない」


 マスカリアは三人に振り向いていた。


 「く...倶全君もわ...私達と頑張るって!!」

 イムがかなり嬉しそうに取り乱していた。


 「えぇ、行こう!遥か上空へ!」


 私達は階段を上がるように空を一段一段登っていった。


 「キレイーーー!!」


 イムが目を輝せながらはしゃいでいた。


 「あわわわわわ!癒されます〜」


 マスカリアもうっとりしている。


 「そうね」


 マテハは穏やかに笑っていた。


 「これが」


 私とマユナは目を見合わせて微笑み向き合っていた。


 「「龍一族のリシャの世界!!!」」


 リシャは恋人と共に訪れたら永遠の愛を誓えると言われている。

 神々の世界を凌駕する程に美しく御伽噺には必ず美しさに恋すると記載がある程の「女の子」達の憧れ。

 アカナも連れて来たかったと私は悔しさを噛み殺した。

 また一つ神々をGAME OVERにしたい理由が増えたと思う。


 建造物は無きに等しく龍一族が住みやすい自然との共存を主目的とした世界。

 天然のミステリアスワールド、木々が囁き花が歌い草が踊るとまで言われている程に生き生きしている自然達。

 最も訪れる事の出来る女の子はいないから伝説の一端として恋するみたいだけども。


 私達はその王が住まうブネデの地に着いていた。


 「ハツミ!良く知っていたわ、ここだって」

 後から降り立ったマスカリアが不思議そうにしている。


 「感じるのよ、心の奥底まで突き抜ける様な強者の力を」

 おそらく王であるアルテンさんだと思うわ。


 「そういう事か、相変わらず流石だね〜..さてと私だけは世話になったからね」


 空気が変わる。

早速、お出まし。



 私は不意に後ろを見る。

(「燃えてる」)


 「君も感じとったのかい?」


 間違いない。

眼前に威風堂々と立っている、この方が或天さん。

 神々と同格と伝承には記載されていたけども

フフフ神々以上ね、確実に。


 「えぇ」


 目の前のアルテンさんと思われる彼は物凄く長身で手足が長い肩までのロングヘアーがスカイブルーで美しく純粋そうな瞳をしている。


 「私が龍一族の王、或天だ。マスカリア久しいね。元気にしていたかな」


 まるで或天さんがマスカリアに微笑むその姿はパパと娘の様。


 「お久〜です〜!アオナっていう新しい友達が増ました!」

 マスカリアは私にしがみついて来る


 私はそれでも後方が気になっていた。

戦火に落ちている可能性が非常に高かったから。


 「今朝神々の四武王の1人ルーが進軍していったよ、恐らくメイユールの地だ」

 

 メイユールの。


 「仲間がいる!?」


 或天さんは首を傾げる。


「メイユールはミリカンテアの勇者に討たれたと聞いている。

 確かに仲間が残っていると思うが助からないだろう」


 或天さんの表情が真剣なものへと変わる。


 「君達はこの書簡を星一族の王、全天に届けて欲しい...?」

 マスカリア、マテハ、マユナ、イムに倶全君が見つめる中で私は目を閉じていた。


 そして翻す。


 「待て!場所も分からぬまま早まるな!全天と合流すればルーに対抗する事は十分に可能だ」


 私は溢れんばかりの侮蔑の笑みをこぼした。

 考えがまるで足りないから。


 「ねぇ或天さん?ミリカンテアの地には魔皇ミラース・ラーバ・ラーサの遺産という名の全ての力が安置されているのかしらねぇ」


 私はいつでも飛び出せる様に構えた。


 「あぁ神々は魔皇様の力を調べるつもりだ、ミリカンテアにて」


 6人は悪寒で背筋が凍り付いた様に身震いしていたのが分かったし、それは私の。


 「ハツミ...?」


 マテハ?そんなに怯えた表情しないで。


 「みんな可愛くて綺麗な顔が台無しだぞ?すぐ終わらせてくるからここで待っていてね」


 「おい...ま......」

とうっすら聞こえた気がした。


 きっと或天さん、止めようとしてくれたんだね。


ーー白亜剣


 知っているからって驚かないで或天さん。


 「私は神ルーをGAME OVERにする」


ーー時断


 私の目の前にメイユールの地が拡がった。

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