第13階 闇一族

 私は突然の行動に驚いていた。


 「まぁ、魔皇様が戻られるまでの間の期限付きだが力を貸す事にしよう。そして改めて歓迎しよう」


 倶天さんには笑みが溢れていた。


 「えぇ、よろしくお願い致します」


 私は深々と頭を下げた。


 「堅苦しいのはここまでだ。して、あいつ《ドゲート》がいうなら信頼に値する人物だろう」


 倶天さんは席に戻っていった。


 「私は騙しているかもしれませんよ?」


 私の言葉に四姉妹は驚いた表情をしていた。


 「そんな事は小事だ」


 倶天さんは冷たくはっきりと口にする。

大きい声では無かったけれども、心に突き刺さる様な重みを含んでいた。


 「我等兄弟義兄弟は共に信奉し共に生き共に食し共に寝る。

 むしろドゲートが騙されているならそれも良かろう。

 共に騙され共に世を去る、これ以外に満足して生きる道は無い」


 悪くいえば依存。

 しかし弱い種族が神々にまで知れ渡るという事はそれだけの理由を持って生きて来たという事でもある。


 物理的に近い存在になる性愛が絡む男女よりも優れた信頼関係を構築していると私は深く敬服してしまった。

 声にならずただただ押し黙っていた。

 今思えばドゲート軍もそういった人々の集まりだったのかもしれない。

 ユグドラシル騎士団に数という現実を突きつけられてなお戦う意思を鼓舞したあの強さの秘密そのものかもしれない。


 今の私はとっても強いもの凄い父と愛らしい母の元で生まれ、父についていく日々を夢見て自分を高めてきた。

 でも繋がりを得る事でこんなにも強くなれるなんて。


 私は今4人の協力者を得て四姉妹に支えられている。

 そこから得られる強さも遥かに大きいという事を私は心の中で結論付けていた。


 皆は私の返答を待っていた。


 「素晴らしい協力者を私は得たと心得ています。

 ですから私はその三人の竜王様は常に共に戦える様に配慮させて頂きます」


 私はこの旅で得る事が沢山あった。

少しは成長しているかな?お父さん。


 「是非次はアルテンのところに向かってくれ!書簡は明日の朝までには書き留めて渡そう」


 倶天さんは何やら楽しそうだった。


 「ありがとうございます」


 私は笑みで応えた。


 「してアオナよ、貴女はどの様な技をお持ちか?」


 私が答えようとしていたけどもマユナが素早く私を制した、せっかくだから譲る事にした。


 「アオナは私達と同種です、それも非常に強力な」


 倶天さんは目を一瞬細める。


 「...非常に強力と言うと?」


 マテハとマユナが顔を見合わせて


 「優族の一団を全滅させる程です」


 マテハが答える。


 「なんと...」


 倶天さんが非常に驚いているのが分かる。

それだけ優族は強者だと認識されている。


 「でも私は自分の魔法の事を一切知らなくて空間をなぞるだけで"何でも出来てしまう"という認識しかありません」


 実際にそうだから仕方ない。

 例えばお母さんにみせて貰った魔法大全という本にも人間界で高度といわれている連続詠唱をはるかに超えるような、数える事がほぼほぼ不可能な数であっても指一つで可能なのだし。

 残り9本の指も同様にこなせる事実も私自ら試してみて確認済み。

 この集然に関しては全身で放てるのだけど

私のほんの極一部でしか未だに使用していない。


 「うむ良かろう、我々闇一族はその鍵を握っているため超位四種族の一角に収まっているといって過言でない」


 それから倶天さんは語り始めた。


 「その指で触れ合うだけというのは闇一族だけが捉える事が出来る超極小の物質を使い

相互作用を引き起こして結果事象が起こってるに過ぎない。


 もし魔法学に知識があるなら精霊魔法のもっと細かくしたものをイメージしてくれればと思う。

 精霊魔法ではある程度、炎や水など完成された物質を集め魔法を引き起こすがこの集然

《しゅうぜん》に至ってはもっと原始的な部分から集める。


 だから魔法学にある様な詠唱を行った魔法が自身だけには影響を受けないという事が取り除かれているのだ。


 言ってしまえば魔法学で判明している領域を遥かに超えた次元で魔法を使用しているのだから自衛の作用も無く、自分自身で身を守る方法を創らねばならない。


 しかし知っていると思うし、感覚を掴み初めているとは思うが、例えば一口に水の魔法では無く水の魔法にあらゆる影響を同時に

付与していると感じられないか?」


 倶天さんの言葉一つ一つが私は目から鱗だった。

 けれどもマスカリアははて?という表情していて、マテハは頷きながら聞いていたけれども食事の方に目を輝かせていた。

 マユナは必死で眠気と戦い、イムはし過ぎ幸せそうに寝ている。

 倶全君はもう眠ってしまいそうになっていた。


 「私もそれは知らないなりにも認識しやすい様に集然と名付けました、それは」


 倶天さんの表情がみるみるしてやられたという表情に変わっていった。


「そうか初めに気付くべきだったな」


 なにか感慨深い表情をされている倶天さん。


 「勇者キレ・ルイデの娘か?正直に話してほしい」


 私は見事に言葉に詰まりました。


 (「後は俺に任せて」)


 白亜剣が空間に切れ目を創り出現し、優雅に空中に浮いています。


 (「久しぶりだな倶天、僕を覚えているか?」)


 斗羅君と倶天さんは念話中です。

 私とマテハは眠りの世界へと旅立っていたマユナとイムそして倶全君を起こしていました。


 (「魔皇様!!!」)


 (「確かに倶天なら気付くと思った。

けれども何も言わずとも分かるな?」)


(「...それはその次元に到達していると

いうことで間違いないのでしょうか?」)


 斗羅君は倶天さんに対し笑みで応える。


 (「倶天よ、アオナ・エカルラートを

主として協力してやってくれ」)


 (「なにとぞ」)


 (「よろしく頼むよ」)


 白亜剣は一旦この場から光と共に消えていった。


 「アオナ・エカルラート殿、以降末長くよろしくお願い申し上げます」


 倶天さんは何かが吹っ切れた御様子でした。


 「えぇ!こちらこそ!!!」

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