第10階 神々の祖
闇一族の城への道中、私達は想いの欠片を見つける。
それを見てマテハが怪訝そうな顔をしていた。
小さな小さなまだ欠片、本当に小さな。
「これって人間の子供の思いよね?」
私は聞いてみた。
マユナとマテハからは笑みがすでに消えているのが分かる。
この先に何があるか分からないと、闇一族が生きているのかさえも。
「闇一族の子達のではないけども。この新しさからすると丁度、倶全君と城を出た直後......」
そうマテハが言い終わった直後。
「分かっているね?...」
マスカリアが手をかざした。
「それは...?」
マスカリアは短剣の
「キルミー(自己犠牲)」を
マテハは刀の
「パーフェクトオーダー(完璧主義)」を
マユナは大鎌の
「マイジャスティス(自己暴走)」を
イムは守護魔法の
「ワールドミー(世界中心)」を
「ハツミにも加護があります様に」
私の中の何かが変化した。
「これは?」
私は私自身の心の奥底に
「オーバーラブ(犠牲愛)」を感じた。
「これはマス姉の自分の欠点を可視化し武具とする加護みたいなもので名を
「ありがとう」
と答えてくれたマテハにたっぷりの笑みで感謝を伝えた。
マスカリアは得意げに
「えへへ」
と笑っていた。
私は手にした瞬間に“魔法の力”が上がった様な気がした。
これであの時代を戦ってきたのね。
それでも彼女達が恐怖を消し去る事は出来なかった。
衣服の薄い少年少女達が草原をかけてきた...おそらく別の世界の人種の子達。
次の瞬間、消えた。
後には草が揺れた。
「前をみて」
私はただならぬ気配に注意を促していた。
それでもマユナとマテハは下を俯いていた、見えてしまったのだろう。
イムだけは突如消えた様に感じられた様だった。
「誰の差し金かしら?」
私がGAME OVERから子供達を助けても子供達は浮かばれない。
GAME OVERの瞬間に心地好さそうに眠りについたのが目に焼き付いていた。
沢山の状態異常を受けていたから、先へ進む選択がなかったのだろうと。
子供達をGAME OVERに追いやった何かに対して恨みや憎しみでも抱いていれば、私は目の前の2人の男を即座にGAME OVERに追いやっていたのだろうか。
「ガハハハハハハハハハ!!!!」
一人は巨人族。
通常の身体機能や一般の魔法が使える種族では可視化する事が一切不可能な次元での光速移動が可能なデタラメな種。
あくまで巨人としてはだけどそれでも超越者に分類され、簡単に言うと神の神。
もしくは神の絶対的な上位種って事。
そしてもう一人は人間の成人男性だ。
背は低いが恐らく強い、放つオーラが違う。
「今は急ぎたい、どいてくれるかしら?」
「無理だよ、ハツミ」
そうマユナが呟いたのが耳に触れる、何に対しての無理だったのだろう。
彼等が強いから単純に通してくれないのだろうか。
それとも子供をあっさりとGAME OVERへ追い詰めた彼等への煮え滾る思いをぶつけたかったのか。
「あのバカ!!」
マテハも飛び出した。
大きく音が響き渡り鎌と刀は短剣の二刀流によって阻まれた。
「マユナとマテハの2人がかりを止められるなんて...」
マスカリアはとても驚いていた。
後ろにいる方々、殺せない事はないの。
それでも動く?
巨人の後ろには人と巨人の混合部隊が少数精鋭といった出で立ちで並んでいる。
今も二刀短剣の人間とマユナ、マテハの戦いは続いている。
今は人間の男が防戦一方で見るからに攻めあぐねている。
マテハとマユナのコンビネーションは凄く良い。
人間の男は武具の扱いに関してマテハより僅かに秀でているけどもマユナがそれを完全にカバーしていて双子の為せる技とでも言うべきなのか。
でもこの戦いは私のこれからを決める上で大切な戦いになる。
なんせ子供をGAME OVERに追いやった、あの巨人は神々の上位種。
父に貰った神話と呼ばれる本に巨人の身体て世界を創った話しがあるけども本当に創作物ってこういう事をいうのね。
神々自身の鬱憤を綴ったのだと心底思う。だからこそ、この巨人を殺す事は神々の世界の消失も意味する。
だからこの戦いが動くという事は神々を全て屠る意味も持つ。
私個人は問題ない。
私の大切な人は全て神の影響外で生きている。
一番懸念していたハツミリムもハツミリフィも魔皇ミラース・ラーバ・ラーサの影響が強いみたいで。
相手の陣営もかなり驚いている、10代にも満たない少女が2人がかりとはいえ大人と互角に渡り合ってる。
それも相当の修羅場を潜っているのが動き、呼吸の重なり具合から理解できる。
メイユールの脅威が去って一つだけ消えた言葉がある。
それが"天才"。
この言葉は安易に使用されなくなった。
マテハが怒涛の勢いで強者の階段を駆け上がる時に使ってしまい誰に使ってもかすんでしまう仕様となってしまったらしい、私もそう思う。
「巨人!!!!!我が名はアオナ・エカルラート。一度だけ交代を許そう、私が出る!!!」
私はあの巨人と短剣の男の2人の力を削りたい。
「小娘ぇぇええええええ!!!!我が名は半完!!!!!!ルヴァイの準備運動は小娘2人で済んだ!!!よかろう!!!」
その時、赤い血が舞う。
「餓鬼だな...」
と同時にルヴァイと呼ばれた、男の声が響く。
「マユナ....?」
イムが呟く。
状態異常:鮮血か。
マユナから鮮血が桜の花びらの様に散っている。
駆け寄ったマスカリアが悲痛に叫んでいた。
「許しは貰った」
ーー点移
ーー白亜剣
そう言って私はマテハの前に出た。
マテハよりも少しだけこの男の方が強い。
だからマユナと2人で互角だった、それで良かったはず。
でも見えたマユナは心を揺さぶられていたのだろう。
巨人が握り潰したまま少年少女を吸収する姿を...イムも同じく。
私は白亜剣でルヴァイの剣と打ち合いを初めた。
ルヴァイは驚いていたが、徐々に気付き始める私の強さの本当の意味に。
「とても信頼されているのね」
ルヴァイと剣を交えながら。
交代を半完と名乗った男が許したのも私の雰囲気に押しやられたからではなかった。
武人としての一騎打ちを許した自分自身と葛藤していたのが目に見えた
実力がある故の煮え滾り切れない思い、それをあえて納得させてやるという事。
選択肢を与えるという事でこれは納得のいく一騎打ちだとしてくれた様だった。
彼は飛び出しそうだった気持ちを抑え今はもう見守っていたこの男に心底託している、御様子だった。
「てめぇはデタラメだがクソ強ぇ、まるで何重にも強化魔法のかけられた剣士と戦っている様だ。底が見えない...これ程の強者、2度と出会えぬな」
ルヴァイは薄ら笑いを浮かべていた。
ルヴァイの言葉は確信をついていた。
私には剣の才能はまるで無かった。それは父から聞かせて貰った事だ。
「剣のみで俺の先は見えているのか」
と。
事実、私は剣を振る事さえ困難だった。
でも私は最強の剣士は知っているし、焼き付いている。
だから私はそのイメージに魔法を超える自在性を持つ集然でただただなぞるだけ。
速さが足りないなら時を飛べばいいだけ、避けきれないなら風になるだけ、支えきれないなら大地になればいい。
私は身体を様々な状況に合わせ、変化させる事で全てを補ってきた。
ルヴァイは剣だけは一流だった。
でも悲しいかな、この世界には魔法がある。
父は剣しか使わないけども、神々にさえ解く事の出来なかった父の閉ざされた魔力と現世を繋ぐ扉。
放出出来ない尋常ではなく膨大な魔力がいつしか身体を巡り血となり肉となり想いとなったと聞いた。
私はいつでもリヴァイも半完もGAME OVERにできる算段はつけていた。
それを踏まえた上で神々の世を滅ぼすか生かすか、決めあぐねていた。
私が面倒をこうむって、この巨人と神々の複雑かつ強固に絡み合った運命と宿命の鎖を断ち切る事をして差し上げる義務もないし。
「ハツミーーーーーー!!!!離れ......」
マスカリアが叫ぶ直前に私はリヴァイの迫る斬撃の力を利用して後ろに飛んだ。
その直後、ルヴァイと私の間で黒い衝撃が走った。
もはや音さえ響かず地を抉り空間を蹂躙していった。
私のもう一つの力が反応し
あぁこれは黒いんじゃないごっそりと持って逝かれたのだと。
色も物質も何もかも。
右手に握っていた白亜剣がその光景に微笑んだ様な気がしたのと同時に、更に白い衝撃が敵陣営に襲い掛かった。
半完は呻きながらかすった神体から全知全能の力が散っていくのが分かった。
後ろをふり変えると白い衝撃をイムが黒い衝撃を仮面を被った。
「倶全君」
がこの力を放った正体だと分かった。
ルヴァイは半完の一部を持って仲間に指示しながら駆けていった、私に微笑みながら。
私は彼が見えなくなるのを確認してからイムの元へ急いだ。
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