第141話 イライラ飛行機移動
「ねえ、あの道路の向こうに見えている金属っぽい建物とその横のガラスみたいな建物は何?」
「ああ、あれはうちの農業部門よ」
「はあ?」
ロデムが作った建物で、それは遠目にも注意を引く構造物だった。
畑の横を通って車道をタイミングを見て渡り、その建物の近くへ行って壁面へ触れてみると金属の様にひんやりとした感触が有る。
「これって何で出来ているの?」
「こっちの大きい方がシリコンの塊で、あっちの透明の方は透明アルミね」
「ええー…… もう、何から何まで規格外で嫌に成るわ」
その時、農場の出入り口から花子お婆ちゃんが出て来た。
「おや、
「行ってました! 空間通路で一旦戻って来たんです」
「そうなのかい。今度はアメリカ人さんを連れて来たのかい?」
「そうなんです。今度アメリカの企業と提携するかもしれないので、色々と異世界堂本舗を見せているんです。デクスター、こちらはうちの農業部門の社長で、
「魔法使いだって? え? アメリカにも魔法使いが居るの?」
花子お婆ちゃんは、魔法使いと聞いて大層驚いていた。
優輝や
「いえいえ! アキラ・クドウに比べたら子供の御遊びみたいなもので」
「あら? アメリカ人にしては謙虚ね」
「やっぱり外国の魔法使いって言ったら、人をカエルに変えたり、カボチャを馬車に変えたりするの?」
「あー、そっち系では無いです……」
大体西洋の物語に出て来る魔女の魔法って、人を何かに変身させる呪い系が多い気がする。
その後デクスターは、花子お婆ちゃんの拡張農園を見て驚き、空間内の時間を操れる事を知って驚き、ミスリルナイフを貰って驚き、で、茫然自失と成ってアメリカへ帰って行った。
その後、暫く日本の自宅で花子お婆ちゃんの農園を手伝ったりしてのんびり過ごしていたら、物凄い剣幕の麻野から電話が掛かって来た。
「おい! お前今何処に居るんだ!?」
「怒鳴らないでよ。今自宅に居るわ」
「自宅って、日本のか!?」
「そうだけど?」
「ば、馬鹿かお前は! 議員や外交官連中がお前を探してたぞ! 勝手に自分だけ帰ったら駄目じゃないか!」
「私の方の話し合いは一応済んだんだけど」
「あのな、飛行機で行ったのに帰りの記録が無ければ行方不明扱いに成るじゃないか! 出国と入国の記録をちゃんと付けて、税関も通らないと入国管理法違反で逮捕されるんだぞ!」
「えー! その位、ちょちょっとなんとかしといてよ。十三時間も飛行機で暇を潰さなければ成らないこっちの身にも成ってよ!」
「お前なあ…… 次からは何とか考えるから、今回は一旦向こうへ戻って飛行機で戻って来てくれよ。頼むよ全く、頭痛てえー」
「分かったわよ! 戻れば良いんでしょ、戻れば!」
優輝は
「飛行機飛んだら一旦こっちへ戻って来て、羽田に着陸する寸前に機内に戻ったら?」
「行きにそれ言ったら駄目って言われたー」
「ああ、もう言ってみたのか」
確か、行きに三浦にずるいとか言われたのだった。
「はーあ、ちょっと憂鬱だけど、行って来るわ」
「うん、がんばれー……」
『がんばれー』
優輝とロデムが気の毒そうに胸の前で小さく手を振っていた。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
一旦アメリカへ戻った
「あー、めんどくさいー! 空間通路の移動に成れちゃうと、ジェット機でさえ
「
『おつかれさまー』
色々と収穫が有ったので、早く研究所へ戻って試したい事が多いのだろう。
「とはいえ、今日は土曜日だった―! 研究所は休みだー! ギャース!」
「じゃあ、その収穫物を俺達にもシェアしてよ。一緒に考えよう」
『考えよう!』
「そ、そうね……」
優輝だってロデムだって一緒に考えれば意外なアイデアが出るかも知れない。
「そうね、ちょっと待って、今私の頭の中にしか入っていない情報を書き出して整理するから」
「えっとね、これがデクスターが使った変身術、それと浮上術と絶対障壁って言ってたかな? 私達のとはちょっと違うバリアーの魔法式なの」
「ふうん、こんな複雑な図形を一目見ただけで覚えられるのって凄いよね」
どうやら
サマンサのマジックミサイルの干渉縞を覚えていた時にも気が付いていたのだが、どうやら
これは、写真記憶、映像記憶とも言われる能力だ。
サヴァン症候群の人に現れやすい能力とも言われるが、有名な日本人では、裸の大将こと山下清がそうだったと言われている。
実はこの能力は、子供の頃に誰でも持っていた能力なのだそうだが、大体の人が思春期頃に失われると言われている。
しかし、本当に失われるのか、潜在能力下に沈んでしまうだけなのかは判明していない。
速読術等で、本のページを映像として記憶出来るとする人が時々居るが、その能力の片鱗なのでは無いかとも考えられる。
「そしてこれが、アリエルが使った空間魔法の干渉縞」
「これの形にエネルギーを通せば、所謂魔法として現象を起こせる事は分かっているのよ。だったら、その魔法を発動させる機械装置が作れるんじゃないかって思っているの」
「だったら、この形の回路を作って、そこにエネルギーを通せば良いんじゃない?」
「その為には、エネルギーを通す媒質が無ければ成らないでしょう? そこで行き詰まるのよ」
「はい! 素人考えなんだけど、言って良いですか?」
「優輝君、どうぞ」
「エネルギーを通す媒質を探すより、エネルギーの方を電流に置き換えてしまっても良いんじゃないですか?」
「えっ、でも、電流じゃエネルギー直よりもパワーが…… いや、その分大電流を流せが良いのか、電流の供給方法は…… あれ? 出来る気がする!?」
確かに純粋エネルギーの派生エネルギーである電流では、そもそもパワー不足だと
それが優輝のなにげない素人考えで、盲点を突かれた気がした。パッと光明が差した気がしたのだ。
「出来そう! いえ、きっと出来るわ! 優輝、愛してる!!」
『ボクもして欲しかったな』
「じゃあ、俺がしてあげる!」
『ありがとー!』
優輝とロデムは、抱き合ってチュッチュしていたら、忘れ物を取りに戻って来た
「いけないー。せっかく魔法式を描いたノートを忘れ…… あ!」
優輝とロデムがイチャイチャしている所を見た
「あー! ズルーい! 私も混ぜろー!!」
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