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 ――週刊言責十三号より抜粋。

 授業放棄、職務怠慢! 圧倒的支持率を誇る女教師にまさかの衝撃初スキャンダル!

 去る六月某日の三時限目。本来であれば一年一組は時間割通り英語の授業を受けるはずであった。しかし当の生徒はこう話す。「その日の三時限目は先生が自習にしました」。一体どういうことであろうかと編集部が調査したところ、驚くべきことが判明した(注、画像1)。

 その日の三時限目、件の授業を受け持っていた英語教諭、坂内アンナが保健室でスマートフォンを手にしている場面である。信じられないことに、坂内アンナは授業を自習にして何者かと連絡を取っていたのだ。偶然目撃していた記者曰く「とても仕事のことを話しているようではなかった」とのこと。編集部は記者が撮影した映像によって、会話の内容を把握することに成功した(注、画像2)。

 会話は全て英語で、画像は翻訳したものである。どうやら、坂内アンナの友人と目される人物が何らかの病に掛かっており、その人物と連絡を取っているようだ。ならば問題はないのでは、とも思われるが、これは教師、及び生徒には一切相談をされていないことが取材によって明らかになっていることから、坂内アンナは無断で授業を放棄し、職責を軽視しプライベートを優先したことになる。何時いかなる時でも教育を何より重視すべき教師という立場にはそぐわない行動である為、新人教諭への指導が足りていなかったのではないかとの声が上がるのは時間の問題と思われる。

 編集部は取材を続けた。そして、さらなる事実を突き止めた。

 なんとこの電話の相手は、生徒から絶大な人気を誇る英語教諭、坂内アンナと同棲する、交際相手であることが判明したのだ。多くの男子生徒の悲鳴が聞こえてくるようだが、ここでも我々は予想外の事実に遭遇する。

 その交際相手であり同棲相手でもあるSは、なんと女性だったのである(注、画像3)。

 我々編集部は、一英語教諭の不祥事で終わらない衝撃の事実に、さらなる取材が必要と判断した。玄関で教諭を迎える交際相手Sに、後日、直撃取材を敢行したのだ。

 県内の大学に通う大学生Sは、教諭とは中学時代からの友人だった。関係が変わったのはSが高校一年生になった頃だと言う。年齢にして二つ違い。先輩であった坂内アンナから、交際を申しこまれたのだ。Sは所謂同性愛者ではない。相当悩んだと言う。しかし、坂内アンナの優しさや魅力を誰よりも知っている彼女は後日、快く交際を受け入れた。曰く、「戸惑いはあったが、彼女と人生を歩むことを想像した時に、不安よりも喜びの方が多いのだろうと思った。後悔はなく、むしろその決断をしたことを誇らしく思う」とのこと(注、画像4)。

 我々は取材の中で、計らずも二人の絆に幾度も触れることになった(注、画像5、6)。

 事件の二日後、Sは風邪をぶり返し、家事一切がままならなかったと言うのだが、教諭は不慣れな洗濯、料理まで、Sの為に懸命にこなしたという。「実は不器用で、砂糖と塩を本気で間違えちゃうような人なんですけどね」とSは言う。彼女は我々の取材に終始笑顔であった。ただ、不祥事に関して話しを伺うと、途端に暗い表情を浮かべた。

「私が風邪を引いて、不安になってつい電話をしてしまった。彼女は優しいから、いけないと分かっていても電話を取ってしまったんだと思う。私の責任」と胸を押さえながら言った。

 坂内アンナの行為は、例え交際相手のSOSを無視出来ない優しさ故のことであったとしても、決して誉められるものではない。我々生徒に奉仕し、時に公僕とさえ揶揄されるほどの役目を担う彼女に優先すべきプライベートなどなく、生徒はこれを糾弾すべきものと考え、我々は当該事件をここに掲載することにした。坂内アンナとSとの関係を否定するものではなく、あくまでも今回の行動の是非を問うものであることをご理解頂きたい。

 男性教諭の多い当校においてマドンナ的な人気を得る坂内アンナの二つのスキャンダル。涙を呑む生徒各位には同情するが、他方、好意的に受け入れる生徒も多いのだろうと想像するのだが、如何だろうか。

 余談だが、現在Sは、坂内アンナの教育への並々ならぬ熱意に感化され、自身も教育者を志し、目下教育学部で勉学に励んでいると言う。今回の件を反省材料とし、良き教育者になる日が来ることを切に願うものである。

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