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週刊言責は毎週火曜日に刊行される。つまり今日は火曜日なのだ。すなわち、次号の発売まではちょうど一週間しかないということになる。
一切包み隠すことなくお伝えしよう。まずい。これはいけない。次号、十三号のページが未だに埋まっていないのだ。
次号に掲載する予定だった案件の取材が難航していることが主な要因で、四ページほど確保していたスペースがごっそりと空いてしまった。
「意見を! 意見を求む! 誰か妙案はないのか!」私は会議が始まった途端に襲いかかってきた焦燥感に冷静さを欠いていた。
私は私で、イケメン教師のスキャンダル――詳しく説明するならば、とある男性教師が年度初めに掲げた禁酒禁煙目標が三ヶ月も持たずにぽっきりと折れ、早くも煙草すぱすぱ、お酒ぐびぐびであることが判明した! ――を提案したが。
「不倫じゃないのかよ」雫は両手を頭の後ろで組んで偉そうに足も組み、
「四ページ埋められるようなものじゃないって分かってるくせにね」藤橋はまたも笑顔。
「ぼくは、別に」別に……どっちなんだ華奈!
「なんだいなんだい敵だらけではないか! 分かっていたさ分かっていたとも、この程度でなんとかなる訳もないと! ならば君らも四ページ埋める何かを提案し給え。言責の危機は皆の危機なのだぞ!」
「出したじゃないっすか」
「確かに君は出したな雫。だが、楠田先生が居眠りしていた生徒にチョークを投げた程度のことが記事になってたまるかと私は言いたいよ。楠田のそれはもはや日常茶飯事。むしろ投げない日があったらそれを記事にしたいくらいだ」
「あ、わたしは次コラムの担当だから」おのれ藤橋、そんなことで責任逃れができると思っているとはなんと卑怯なことか。
これは困った。小ネタを詰め込んで四ページを埋めるという手もなくはないが、いやしかしそれでは十三号のインパクトが薄れて仕方がない。うーむと唸ってみるにはみるが、それで解決するようなものでもない。困った。困った。と唇を尖らせたその時であった。
小さな手がぬるりと。
私の目の前に座る彼女は、俯いたまま下唇を噛み、ゆっくりと立候補を申し出たのである。
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