第33話 霧に沈む過去

ミストレア―外縁


カルト:「てめえは昔この村にいたのか」


ガラトルト:「ああ、楽しく暮らしてたぜ。村のみんなからも力持ちって頼りにされてたんだぜ。だが、ある時あのくそじじいに無理やり村を追い出されたんだ。くそみてぇな村人をぶっころしただけでな」


カルト:(こいつ、ミストレアで人を殺したのか。そんなことじじいは一回も……)


ガラトルト:「そして……俺はあのくそじじいに殺されかけた」


カルト:「あのじいさんが、噓だろ」


ガラトルト:「いいや、本当だ。ひどいもんだったぜ。村の秘密を守るためにあのじじいは俺の心臓を目の前で握りつぶしやがったんだ」


カルト:「心臓をっ」


ガラトルト:「がははは、あのくそじじいの失敗は心臓を握りつぶして満足しちまったことだな。俺の死をちゃんと確認しなかった。おかげで俺様はこの力を手にすることができたぜ」


バシュン、バシュン、バシュン、バシュン


カルト:「な、なんじゃこりゃ」


ガラトルト:「がははははははははははははははははははははははははは」


カルト:(背中から翼だけじゃなくて腕が四本生えやがった)


ガラトルト:「なかなかやるみてぇだが、てめえじゃ俺様を殺すことは不可能ってことを教えてやるぜ。てめえの命をもってなっ」


バッ


カルト:「くっ」


ガリィィ


ガラトルト:「一つはいなせても。ほか三本の腕はいなせないだろ」


バンッ


カルト:「がはっ」


バンッバンッバンッバンッバンッバンッバンッバンッバンッ


カルト:「あああああああああああああああああ」


ガラトルト:「よええ虫けらをいたぶるのは楽しいぜ、がははははははははははは」


バンッバンッバンッバンッバンッ、バシィ


ドガッ


カルト:「ぐはっ……」


ガラトルト:「おいおい、もう終わりかよ」


カルト:「く」


ガラトルト:「まあいいか。あんまりてめぇに構ってると、じじいがマーキュリーにやられちまうからな」


カルト:「ま、マーキュリー」


ガラトルト:「俺様はあのじじいに見せてやりてぇんだよ。てめぇが命がけで自分の手を汚してまで守ってきたものが俺様の手であっさりとぶっこわちまうところをな」


カルト:「て、てめぇ」


ガラトルト:「じゃあな、あばよ、くそがき」


カルト:「くっ」


(キュリス……)


ドガッ


ガラトルト:「ぐはっ」


カルト:「なっ……」


(急に化け物が、吹っ飛びやがった)


ガラトルト:(この力は)


少年の声:「カルトっ」


カルト:(この声は)


「アッシュ」


アッシュ:「カルト、大丈夫」


カルト:「あ、ああ」


ガラトルト:「灰色の髪をしたガキ……はは、そうかってめえがマーキュリーの言っていた」


アッシュ:「マーキュリーってことはお前も帝国の」


ガラトルト:「ちょうどよかっったぜ。どいつがあいつの言ってるガキと金髪の女か探し回るのもかったるいと思ってたんだ。まさか相手から来てくれるとはな」


バシュン、バシュン、バシュン、バシュン


アッシュ:「なっ、腕が」


カルト:「裂けて、八本に増えやがった」


ガラトルト:「くらえええ」


アッシュ:「ぐうう」


カルト:「止めたっ」


ガラトルト:「がはは、やはりお前も神の意図の使い手か。俺様の攻撃を止めるとは大したもんじゃねえか。だがなっ」


ザッ


ガラトルト:「八本全部止められなきゃ意味ねぇんだよ」


アッシュ:「ぐっ」


(真正面からの五本は止めたけど。横から回ってきた三本に対応できない)


アッシュ:「正面の五本はおとりか」


ガラトルト:「てめぇみてぇなやつとの戦い方はわかってんだよ」


アッシュ:「ダメだ、左右からくる三本に対処できない」


ガラトルト:「ぎゃはは、殺しはねぇから安心して俺に倒されな」


アッシュ:「くっ」


カルト:「うぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおお」


アッシュ:「カルトっ」


バンッ


ガラトルト:「何ッ」


(左の一本を木の棒ではじいて、右からの二本は体を張って受け止めやがった)


カルト:「ぐっ、はっ」


アッシュ:「カルトっ」


カルト:「アッシュ……村を、みんなを頼む」


アッシュ:「カルト、カルトおおおおおおおおおおおおお」


ガラトルト:「ちっ、余計なことしやがって」


(殺す気でやってたら一発で死んでたが、運がいい奴だぜ)


ガラトルト:「まあ、てめぇが何をしたって村がぶっ壊されるのはけって事項なんだけどな」


アッシュ:「カルト、そこで休んでいてね。こいつは僕が倒す」


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る