神の意図

第31話 霧の戦い

深い霧の中

ガラトルト：「く、くそがああ」

キュルート：(ぬ、腕が動物の爪のように変形した)

ヒョイッ

ガラトルト：(触れる寸前でじじいが消えたっ。あの時と同じやつか)

キュルート：「ふん」

ガラトルト：「ぐあっ」

(いつの間に後ろに)

ガラトルト：「ぐっ。このぉ」

ブンっ

ガラトルト：「またかよ」

キュルート：「ほっ、ほっ、貴様はあのころから何も成長しておらぬようじゃな」

ガラトルト：「な、なんだとこのくそじじいがあああああ」

ブン、ブンッ

ガラトルト：「くそ、ちょこまかちょこまかと。うおりゃっあ」

ブンッッ

キュルート：「相も変わらず頭に血が上ると攻撃が大振りになるの」

ガラトルト：「くっ、じじい」

キュルート：「ふんぬ」

ガラトルト：「ぐはっ」

(脳が、揺れた)

キュルート：「……ふんっふんっふんっふんっふんっふんっふんっふんっふんっふんっふんっ」

ガラトルト：「があああああああああああああああああ」

マーキュリー・シーン：(あの老体でよくあんなにラッシュを叩き込めるな。腐っても司祭というところか)

キュルート：「ふんぬお」

ガラトルト：「っ」

グシャッ

ガラトルト：「がっ、はっ……」

キュルート：「貴様がいくら挑んで来ようとこのわしには勝てぬよ。信仰を忘れ、己の欲におぼれた愚か者にはな」

ガラトルト：「じ、じじい」

マーキュリー・シーン：「はあ、もういいよ。ガラトルト」

ガラトルト：「な、俺は、まだ……」

マーキュリー・シーン：「私の命令が聞けないのか」

ガラトルト：「ぐっっっっ……わかった」

バサッ

キュルート：(背中から羽が生えたじゃと。ばかな、あのようなやつがガンマ教の神の寵愛を受けられるはずが……)

ガラトルト：「じじい、てめえをぶっ殺すことは叶わなかったが。てめぇが今まで後生大事にしてきた村人たちの悲鳴で手目の復讐は果たしたことにしておいてやるぜ。じゃあな、くそじい」

キュルート：「っ」

ガラトルト：「なっ、じじい」

キュルート：「行かすと思ったか、な、何」

バシっ

キュルート：(か、体が、動かぬ)

マーキュリー・シーン：「つーかまえたぁ」

ガラトルト：「へへ、びびらせやがって。あばよくそじじい。せいぜい気張って汚たねえ花道を飾るんだな、ぎゃはははははははは」

キュルート：「く、おのれ」

ドシャン

マーキュリー・シーン：「……」

ドシャ

キュルート：「……」

マーキュリー・シーン：(さすがに地面にたたきつけたぐらいじゃピンピンしてるか)

キュルート：(拳を交えずとも見て取れる。この男の禍々しい神の意図が)

キュルート：「貴様はやはり、あの時死んでおくべきじゃった」

マーキュリー・シーン：「それは残念。君たちは最初で最後のチャンスを逃してしまったね」

キュルート：「……ほっ、ほっ、遅いということはあっても手遅れということはあるまい」

マーキュリー・シーン：「…………………」

キュルート：「貴様はこのわしが倒す。この老いぼれに残されたか細い灯、そのすべてをかけて」