第26話 「不遇なんかじゃない」

ミストレア―外


タルク:「あっしゅ・しるばぁ、てめえか村長のじいさんが連れてきたよそ者は」


アッシュ:「勝負はすでについています。これ以上カルトさんを殴りつける意味はないでしょ」


タルク:「ああん、しょうぶぅ。何わけわかんねえこと言ってるんだよ。俺はこいつに教えてやってるんだよ。てめえの無力さってやつをな」


アッシュ:「…………」


タルク:「十三のガキ、しかも親に捨てられたみなしごに何ができるっつうんだ。外の世界に出るぅ、んなことしねえで黙って村の手伝いでもしてればいいんだ。バカみたいな夢見ねえでよ」


アッシュ:「みなしごは、親に見捨てられた子は夢まで捨てなくちゃいけないんですか」


タルク:「っ……」


アッシュ:「僕はカルトさんを尊敬します」


キュリス:「アッシュ君」


アッシュ:「恵まれない環境でもめげず、自分の夢をもってそれに向かってがんばっていけるカルトさんはすごい人です」


カルト:「…………」


タルク:「けっ、んなことはどうだっていいんだよ」


アッシュ:「…………」


タルク:「今日はこれぐらいで勘弁してやる。二度うちの弟に手を出すんじゃねえぞ」


アッシュ:「…………ふう」


(なんとかなった、みたい?)


キュリス:「アッシュ君、ありがとおおお」


アッシュ:「わ、わ、わかりましたから。あんまり手を振らないで肩外れますから」


カルト:「…………」


アッシュ:「カルトさん」


カルト:「余計なことを」


アッシュ:「す、すいません」


キュリス:「ちょ、カルト、アッシュ君はあんたのために」


カルト:「一つだけ、お前に言っておくことがある」


アッシュ:「え、ちょっ」


グイッ


キュリス;「へ」


アッシュ:(顔、ちかっ)


カルト:「俺は、不遇なんかじゃねえ」


アッシュ:「それって……」


カルト:「俺の名前はカルト。アッシュ……シルバだったな。何にもねえ村だが、歓迎するぜ」


アッシュ:「は、はい。こちらこそ」


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