第23話 ベータ教の真実

キュリスの家


ミゼル:「ふう、お腹いっぱい」


アッシュ:「おいしかったです」


白い頭巾の娘:「よかったあ、腕によりをかけたかいがあったよ」


ミゼル:「ねえ、キュリス」


アッシュ:「きゅりす?」


白い頭巾の娘:「何、ミゼル」


アッシュ:(あ、この人キュリスさんっていうんだ。そういえばまだ名前を聞いてなかった)


ミゼル:「単刀直入に聞くけど……この村って何」


アッシュ:「ミゼルさん」


ミゼル:「ピンチだったところをおじいさんに助けてもらったし、キュリスにはアッシュ君の介抱を手伝ってもらった。こうやってご飯もごちそうになったわけだし、この村の人たちが私たちを追ってる人たちの仲間じゃないのはわかってる。けど……」


アッシュ:(ミゼルさん、この村の人たちがマーキュリー・シーンとつながってるかもしれないと思ったから僕につきっきりだったんだ)


ミゼル:「この村は普通じゃない。霧に囲まれて外の情報はわからないけど、ここがガルダーミンクであるのは確か。水も緑もない、岩しかない場所でこれだけ大きな村があるなんて普通じゃない」


アッシュ:「……」


ミゼル:「この村は何なの、どうしてこんな過酷な場所であなたたちは生きているの。あなた達は、いったいなにを隠しているの」


キュリス:「……」


アッシュ:「キュリスさん」


キュルート:「その質問にはわしが答えよう」


キュリス:「おじいちゃん」


アッシュ:「おじい、ちゃん?」


ミゼル:「え、おじいちゃんってキュリスのおじいさんだったの」


キュルート:「ほっほっほっ、そういえばまだちゃんと自己紹介をしておらんかったのう。どれ少年もちょうど目が覚めたようじゃし改めて自己紹介させてもらうかのう」


アッシュ:(この人がミゼルさんの言っていた霧の中から現れた謎のおじいさん)


キュルート:「わしの名前はキュルート・コスコポンポス、このミストレアで村長のようなことをやらしてもらっとる長生きしか取り柄のないおいぼれ老人じゃ」


ミゼル:「お、おいぼれって」


キュリス:「そんなこと言ったら村のみんながかわいそうだよ。みんなおじいちゃんのこと村長として敬ってるんだから」


キュルート:「中にはわしのことを村に閉じこもってふんぞり返るしか能のない老害じじいと言っている奴もおるがの」


キュリス:「もうおじいちゃんったら」


ミゼル:「あ、あははは」


(もう笑ってごまかすしかないわね)


キュルート:「でこっちがわしの唯一にして世界一かわいい孫娘のキュリス・コスコポンポスじゃ」


キュリス:「もう、おじいちゃんっ、恥ずかしいからその紹介の仕方やめてよね」


キュルート:「何を恥ずかしがることがあるんじゃ、事実なんだから何も恥ずかしがることはあるまい」


キュリス:「おじいちゃんったら」


ミゼル:「あはは」


アッシュ:「…………」


ミゼル:「なんで私の方を見てるのよ」


アッシュ:「いえ……別に」


ミゼル:「ちょ、言いたいことがあるならはっきり言いなさいよ。私の方見て何考えてたの」


アッシュ:「別に何も考えてませんよ」


ミゼル:「嘘よなんか変な間があったじゃない」


アッシュ:「き、気のせいですよ」


キュルート:「……うぉっほん」


アッシュ、ミゼル:「「っ」」


キュルート:「話を戻してよいかの」


アッシュ、ミゼル:「「あ……すいません」」


((先に話脱線させたのあなたですけど))


キュルート:「さて自己紹介も終わったところで、おぬしたちが聞きたいのはこの村について、もっと詳しく言うとこの村の成り立ちいについて知りたいのじゃろ」


アッシュ:「は、はい」


ミゼル:「この村があるのは岩しかないガルダーミンクにある穴の奥深く。とてもじゃないけど立地のいい場所じゃない。そんな場所にわざわざ村を作るなんて、とてもじゃないけど何か裏がなきゃ説明がつかない」


キュルート:「ほっ、ほっ、ほっ、ミゼルちゃんは賢いの。その通り、この村は普通の村じゃない。この村は……」


アッシュ、ミゼル:「「…………」」


キュルート:「ガンマ教の神に仕えるガンマ教信徒の聖地なのじゃ」


ミゼル:「っ…………」


アッシュ:「ガンマ教?それってベータ教とはまた違うものなんですか」


キュルート:「左様、ガンマ教の神が司るのは無心と真実。ガンマ教の信徒はガンマ教の神に仕えながら己の中に眠るすべての欲を捨て去り、世界の真実、この世の理に潜む本質を探究していくことを使命にするものたちのことなのじゃ」


アッシュ:「へえ…………」


キュルート:「ほっ、ほっ、ほっアッシュ君には少し難しい話じゃったかな」


ミゼル:「…………」


アッシュ:「ミゼル、さん」


少年の声:「う、うわあ」


アッシュ:「ど、ドアがっ……え、き、君は」


腕に青いバンダナを巻いた少年:「いてて……あん、てめぇらこそ誰だ」


キュリス:「カルト!あんた何してるのよ」


アッシュ:「カルト?」


カルト:「あん、お前の家に変な奴らが押しかけてるって聞いてどんな奴らか見に来てやったんだよ」


キュリス:「だったら堂々と入ってくればよかったでしょ。どうしてドアと一緒に入ってくるのよ。もしかして私たちの話を盗み聞きしてたの」


カルト:「お、俺がそんなせこいまねするわけないだろ」


キュリス:「じゃあどうしてドアと一緒に倒れこんできたのよ」


カルト:「そ、それは……」


キュルート:「ほっ、ほっ、ほっ、まあよいではないか。どれせっかくじゃ、アッシュ君とミゼルちゃんに見せたいものがあるでのう、ちょっとこのおいぼれに付きおうてくれんか」


アッシュ:「ぜひお願いします」


ミゼル:「……」


アッシュ:「ミゼルさん?」


ミゼル:「え、あ、ああ、私も見たいです」


キュリス:「じゃあ、私も」


カルト:「な、なら俺も行くぜ。こいつらが何をするかわからねえしな」


アッシュ:「何もしないですよ」


キュルート:「ほっ、ほっ、ほっ、それじゃ行くかの」


ミゼル:「…………」


(ガンマ教……名前だけなら信心深くない私でも聞いたことがある。エルダント帝国はベータ教以外の神を崇拝する者たちを邪神崇拝教として国の設立以来ずっと迫害してきた。その筆頭がアッシュ君に神の意図を授けたと思われるデルタ教の神を崇拝するデルタ教なんだけど、その中にはガンマ教も含まれてる。ガンマ教は昔エルダント帝国に信徒総出の大規模な反乱を起こした。それはエルダント帝国が建国してから唯一の大きな争いとなっている。その争いは当然のようにエルダント帝国の勝利に終わった。そして………………ガンマ教の信徒は全員処刑された)


ミゼル:「この人たちは、一体」


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