第22話  隔絶された平穏

白い頭巾の娘が住む家


白い頭巾の娘:「もうすぐでできるから楽しみにしててね」


アッシュ:「何かお手伝いしましょうか」


ミゼル:「わ、私も」


白い頭巾の娘:「いいよ、いいよ、二人はおじいちゃんのお客さんなんだから、ゆっくりしてて」


アッシュ:「そ、それではお言葉に甘えて」


(おじいちゃん、ってさっきミゼルさんが言ってた杖をついたおじいさんの事)


ミゼル:「…………」


アッシュ:「…………なんか普通に食事することになっちゃいましたけど」


ミゼル:「本当は早くこの村について調べたいところなんだけど」


キューキュルキュル


アッシュ:「ミゼルさん」


ミゼル:「…………アッシュ君でしょ」


アッシュ、ミゼル:「「………………」」


白い頭巾の娘:「ご飯できたよ」


アッシュ、ミゼル:(ナイスタイミングッ)


白い頭巾の娘:「たいしたもんじゃないんだけど、腕によりをかけて作ったから、いっぱい食べてってね」


ミゼル:「わあ、おいしそう」


(ガルダ―ミンクって水も緑もない茶色の台地のはずなんだけど、この山菜たちはどこからとってきたのかしら)


ミゼル:「……」


アッシュ:「ミゼルさん……手が動いてません」


ミゼル:「えへへ、アッシュ君なに言ってるのよ、おいしそうな山菜料理ばっかりでどれから食べようか迷ってるのよ、もう」


(仕方ないでしょ、急展開ばっかりで神経が過敏になってるんだから……まあ、でもさすがに毒が入ってるなんてことはないわよね、よし)


ミゼル:「い、いっただきまーす……む、おいしい」


アッシュ:「………………」


白い頭巾の娘:「よかったあ、口に合わなかったらどうしようかと思ったよ。おかわりもあるから遠慮しないで言ってね」


ミゼル:「あ、ありがとうございます」


(岩ばっかりの場所で育った山菜だからどんなかと思ってたけど、普通においしい。味付け自体は素朴だけど、なんかこう田舎の味というか安心する味というか……あれ、私これに似た味を最近食べたような)


アッシュ:「……」


ミゼル:「はっ」


(思い出した。この味、オルランドさんの家で食べたテレーゼさんの手料理と同じ……)


ミゼル:「アッシュ君…………」


アッシュ:「……ミゼルさん」


ミゼル:「………………」


アッシュ:「この料理、とっても、おいしいですね」


ミゼル:「……そうね、おいしいわ、とても」


白い頭巾の娘:「おかわりもってきたよ」


ミゼル:「まだ頼んでないけど」


アッシュ:「……いただきます」


ミゼル:「…………私も」





キュルート:「霧が、わなないている。あやつが近づいている証拠か……」


(今日は星がきれいじゃのう。霧の曇りなどたやすくかき消しておるわ)


キュルート:「まるでわしのしてきたことなど無駄なあがきに他ならぬと憐れまれているようじゃ」


(そうなのかもしれん。いや、きっとそうじゃ。わしはあの時から何もしてこなかった。わしのしてきたことは何の意味もない。無味な人生……)


キュルート:「それでも神はこの無駄に長く生きたわしに役目を与えたのじゃな」


(最初で最後、終わりを始めるための役目)


キュルート:「その役目この命に代えても必ず果たして見せる。それが、このおいぼれにできる最後の贖罪じゃからな」


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