第21話 霧の町ーミストレア

静かな小屋の中


アッシュ:「…………ここは……僕はたしか……はっ」


(あいつは)


白い頭巾の娘:「ああ、目が覚めたんだね」


アッシュ:「え……あ、あなたは」


ミゼル:「起きたのね、アッシュ君」


アッシュ:「ミゼルさんっ、無事だったんですね」


ミゼル:「当然でしょ。宇宙一かわいいトレジャーハンターの私がそんな簡単に死ぬわけないじゃない」


アッシュ:「……」


ミゼル:「……ちょ、なんか言ってよ。言ってるこっちが恥ずかしくなるでしょ」


アッシュ:「そ、そう、ですね」


(だったら言わなきゃいいのに)


アッシュ:「それで、ミゼルさん…………あいつは」


ミゼル:「…………」


アッシュ:「そう、ですか」


ミゼル:「アッシュ君………………」


アッシュ:「…………大丈夫です。気にしないでください」


ミゼル:(笑顔を取り繕ってるけど、悲しい顔。やっぱりアッシュ君はあいつを)


アッシュ:「それよりミゼルさん、ここは一体」


ミゼル:「それが、私もよくわからないのよ。あの後、突然アッシュ君と一緒にどこかに飛ばされちゃって」


アッシュ:「飛ばされたって、この村にですか」


ミゼル:「いいえ、飛ばされたのは深い霧の中」


アッシュ:「え、じゃあ、霧の中をあっちこっち歩き回ってこの村を」


ミゼル:「違うわよ。さすがに、意識のないアッシュ君を連れて霧の中を歩き回れるわけないじゃない。か弱い女の子よ、私」


アッシュ:「………………」


ミゼル:「ちょっと、なんで言葉に詰まるのよ。どこかどう見ても可憐で儚い女の子でしょ」


アッシュ:「そ、そうですね……そ、それよりミゼルさんはどうやってこの村を見つけたんですか。前から知っていたわけじゃないんですよね」


ミゼル:「ええ、私たちがこの村に来れたのは霧の中から現れた杖をついたおじいちゃんのおかげなの」


アッシュ:「霧の中から現れた、杖をついたおじいちゃん」


ミゼル:「そうなの、そのおじいちゃんの後を深い霧の中ついていってたらこの村に案内されたってわけ」


アッシュ:「……あの、よく意味が分からないんですけど」


ミゼル:「そうよね、私もさっぱりだわ」


白い頭巾の娘:「まあまあ、ようやく目が覚めたんだから。アッシュ、君とミゼルちゃん、難しい話は置いておいて、今からご飯を作るから、食べていってよ」


アッシュ:「あ、いや、僕は」


白い頭巾の娘:「ミゼルちゃんも、一晩中アッシュ君のお世話して疲れたでしょう。ご飯食べたら少し休んでいくといいよ」


ミゼル:「え、いや私は」


白い頭巾の娘:「じゃあ手を洗ってあっちの椅子に座っててね。私はご飯の用意してくるからー…………」


アッシュ、ミゼル:「「…………はい」」




霧の中


マーキュリー・シーン:「これは、いったい」


ツー、ツー


マーキュリー・シーン:[どうしたパルティエナ]


ムーン・パルティエナ:[シン様、大変です。殺したはずの村人たちが]


マーキュリー・シーン:[全員消えたのかい。それも瓦礫とかも一緒になって]


ムーン・パルティエナ:[っ、どうしてそれを、まさか]


マーキュリー・シーン:[そのまさかだよ]


ムーン・パルティエナ:[一体何が……]


マーキュリー・シーン:[さあね、ただ一つだけ言えるのはこれだけのこと人間の力でできるものとは到底思えない。つまり]


ムーン・パルティエナ:[神の意図を使えるオラクルがいるということですか]


マーキュリー・シーン:[そういうことだね。しかもこれだけの広い村を模造できるほどの使い手が]


ムーン・パルティエナ:[それはつまり、シン様クラスの使い手、ということですか]


マーキュリー・シーン:[ふ、パルティエナ、君も冗談を言いう時があるんだね。さすがの私も驚いたよ]


ムーン・パルティエナ:[っ…………]


マーキュリー・シーン:[まあ、攻撃してこない所を見ると相手にそこまでの敵意があるわけじゃないらしい。ここは相手のフィールド、パルティエナたち一旦船に戻っておいて]


ムーン・パルティエナ:[なっ、それではシン様は]


マーキュリー・シーン:[私は大丈夫。このままあたりを見回してみるよ。どうせあの少年を捕まえるか殺すかしないとエルダントには帰れないしね]


ムーン・パルティエナ:[それでしたら私も]


マーキュリー・シーン:[大事なサテライトをこんな異質な空間に置いておくわけにはいかないだろ。それにもしかしたら少年たちはこの霧を隠れ蓑にガルダ―ミンクから離脱をしようとしているのかもしれないしね]


ムーン・パルティエナ:[…………わかりました。それでは船に戻ってシン様の帰りをお待ちしております。ご武運を]


マーキュリー・シーン:「……ふう、やれやれ、物分かりが悪くて困った子だ」


(だけどこれで邪魔者はいなくなった。これで思う存分アッシュ君を分いたぶれるようになったんだけど、これは)


マーキュリー・シーン:「この霧…………間違いない」


(いるんだな、ここに……四大教皇の祖先にして最後の生き残り、ガンマ教司祭、キュルート・キュスコポンポス)



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