第3話 デルタ教
鎧を着たトルント族の兵士:「わかったら、とっと腕を背中に組んでその場にしゃがめ」
ミゼル:「わ、わかったわ」
アッシュ:「………………」
鎧を着たトルント族の兵士:「そこの坊主、聞こえなかったのか、さっさと手を後ろ手に組んでしゃがめ」
アッシュ:「……お前」
ミゼル:「待って」
アッシュ:「っ」
ミゼル:(あの鎧に刻まれた黒い十字架、あれは間違いなくエルダント帝国のシンボルマーク。どうしてエルダント帝国の兵士がこんな南の僻地に……)
ミゼル:「ここは大人しく、従いましょう」
アッシュ:「でもおじさんが」
ミゼル:「………………」
アッシュ:「……わかりました」
鎧を着たトルント族の兵士:「ふむ、利口な判断だ。我が名はトルント・アックス、エルダント帝国に使える正統な戦士である」
ミゼル:(アッシュ君は気づいてないけど、オルランドさんの傷はそこまで深くない。すぐに治療すれば助かるかもしれない。今は事を荒立てず、大人しく従ってこのトルントをやり過ごすのが賢明な選択)
トルント・アックス:「我らがこんな辺境の村までわざわざ足を運んだのは他でもない、貴様らの中にデルタ教の神より加護を授かったオラクルがいるという情報が入ったからだ」
ミゼル:「デ、デルタ教、そんなまさか」
ミゼル:(デルタ教ってあの邪神を崇め奉って世界に混乱をもたらそうとしてるって言われてる最悪の教団のこと。この前もどっかの国でとんでもないテロを起こして尋常じゃないぐらいの被害を出したって聞いた。けどまさか、こんな田舎に住んでるオルランドさんがそんな危ない教団とかかわりを持ってるなんて、とてもじゃいけど信じられない)
トルント・アックス:「大人しく吐けば、憎っくきデルタ教の信徒以外は許してやろう。だがもし、隠し立てするようなら貴様ら全員我の聖なる斧、ブラッドアックスで全員その魂を浄化させてやろうぞ、ははははははははははは」
ミゼル:(オルランドさんたちがそんな危ない教団と関わりがあるなんてとても信じられないけど、デルタ教に関わる者は信者でなくても関わりを持った時点でエルダント帝国に粛清される。たとえそれに確固たる証拠がなくても)
ミゼル:「そ、そんなこと言われても、誰がそのデルタ教の信者なのかなんて私にわかる訳ないでしょ。頭の中で考えてることなんてそれこそ、神様でもなければわかるわけないんだから」
トルント・アックス:「何を勘違いしておるのだ」
ミゼル:「え」
トルント・アックス:「言ったはずだぞ、我が言ったのはデルタ教の神、忌まわしい邪神より加護を受けたこの世界の害獣であると。そうでなければエルダント帝国の戦士である我がわざわざ足を運ぶわけないであろうが、たわけ」
ミゼル:「そ、それって、その邪神から加護を受けた人がさっき言っていたオラクルってことなの」
トルント・アックス:「そうだ、神より加護を受け取った選ばれしものを我々はオラクルと呼んでいる。そして神の加護を得られたものは皆なにかしらのよく別な力に目覚め、人智を超えた現象を引き起こすことが出来るとされている」
ミゼル:「じ、人智を超えた力って……」
ミゼル:(もしかして)
トルント・アックス:「何か知っているのか、女」
ミゼル:「え、いや………………」
トルント・アックス:「………………」
ミゼル:「……知ってるわ、私その神の加護を授けられたオラクルが誰なのか、知ってる」
トルント・アックス:「ほう、それは一体、誰なのかな」
ミゼル:「それは………………」
トルント・アックス:「それは………………っ、貴様」
ガキィィン
オルランド:「は、はやく、逃げろ」
アッシュ:「お、おじさん」
ミゼル:「オルランドさん」
トルント・アックス:「この老いぼれ、まだ死んでいなかったのか」
テレーゼ:「アッシュ、ミゼルちゃん、こっち、旦那がそこのブタを抑え込んでる間に逃げるよ」
アッシュ:「え、で、でも」
オルランド:「は、早く行くんじゃ」
ミゼル:「行くわよ、アッシュ」
アッシュ:「あ、ま」
オルランド:「行け、行くんじゃ」
トルント・アックス:「この老いぼれがああああああ」
ガキィイン
オルランド:「ぐふっ」
トルント・アックス:「時間稼ぎのつもりか、まさかこの我に本気で勝てると思っているわけでもあるまい」
オルランド:「まあ、そのつもりじゃがの、殺し合いの戦い中、本気で勝つ気のない奴が一秒も戦場で立っていられるとは到底思えんわい。本気で貴様の首を取りに行かせてもらうぞ」
トルント・アックス:「死にぞこないのじじいが、心配せずとも我の手で貴様の家族全員あの世へ送ってやる」
オルランド:「知らないなら教えてやるがワシは木こりじゃ、斧は誰よりも振ってきた。貴様に本当の斧の使い方というものを見せやるわい」
ガキン、ガキン、ガキィイン
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