第7話 何故ここにこんなものが‥‥

第7話 何故ここにこんなものが‥‥


「核や装備はいいとして、襤褸切れをどうしろと‥‥」


 戦闘終了後、手に入ったドロップ品を確認してぼやく。焚火の火種に使おうにも、なんとなく異臭を放ちそうで躊躇う一品である。毎回出られるとカバンに臭いが染み着きそうでイヤだ。


「取り敢えず出口探さんとな‥‥」


 独り言がクセになりそうだ。そんなことを思いながら周囲を警戒し、鑑定し、時に採取と戦闘をこなし――そろそろカバンも満タンになりそうなころ、通路の先に3枚の石の扉を見つけた。


「ドクロに宝箱に温泉のマークとはまたわかりやす‥‥待て、温泉?」


 何故洞窟――恐らくはダンジョンらしきモノ――に温泉? 幾分悩みながらも気になるものは気になる-取り敢えずは宝箱の部屋に入り、周りを鑑定して罠らしきものがないことを確認。さっくり中身をいただいて部屋を出た。


 先に開けた扉はそのままに、ドクロは恐らくボスであろうからと気になる温泉マークの扉の前に立つ。外から“索敵”した感じでは、中に敵性生物はいないが――悩むこと少々、意を決して扉を開けた。


「‥‥‥いや、なんで銭湯風‥‥」


 そこには“男湯”“女湯”の暖簾がかかり、お風呂です! と主張している。少々‥‥いや、かなり理解に苦しむ。だがしかし、そこそこの時間採取だの銭湯だのしたのでお風呂は魅力的――もう一度、周囲に敵性生物がいないことを確認して、意を決して暖簾をくぐり‥‥ぐったりと脱力した。


「‥‥どう見ても脱衣所‥‥もう、いいや‥‥入ってしまおう」


 開き直ってすっぱりと脱ぎ、据え置きのタオルを巻いて中に入るとそこは――露天風呂だった。

 なにもかも諦めたような遠い目になり、マナーにのっとって洗った後に温泉に浸かる。やはり緊張はしていたので、幾分かほっとした。


「たぶん、もう一つのドアはボス部屋だろうが‥‥そこが最後で出られるといいのだが‥‥」


 ふぅ‥‥と吐いた溜め息は、湯の中で泡となって消えた――

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