第146話 この道は、いつか来た道?
------
「~新エリア「ハサルラート」解放!~
1.ノルドエリアの南に位置するハサルラートエリアが解放されました!!
ノルド南東の砦を越えれば、そこには一面の広大な砂漠が広がります。昼は猛暑、夜は極寒、そして絶え間なく襲い掛かってくる凶悪な魔物たち。過酷な環境を踏破した者だけが辿り着くことができる景色とは…!?
※関所を通過するにはクエスト「Lv50:新たな力が欲しいか?」を達成した上で、「王との謁見」「騎士団の試練」などの特定のクエストのうち1つ以上を達成し、「越境許可証」を入手している必要があります。
※暑さ、寒さによる地形ダメージを軽減するアイテムは…
2.レベルキャップが一部解放されました!!
60が上限だったレベルについて、Lv70まで上げられるようになりました。これに合わせ、「Lvアップ応援キャンペーン!!~経験値も熟練度もザックザク、キミの筋肉は黄金郷!?~」を開催します。特定のエリアで、一定の条件下において、Lv50未満の方は経験値および熟練度が2倍、Lv60未満の方はそれぞれ1.5倍になります。
ちょっとゆっくりし過ぎた人たちは、この機会にみんなに追いついちゃおうね!レッツ、ビルドアップ!!対象となるエリアと条件は…」
------
「エリの悪い影響を受けたようですね。まったく、あの娘達は…」
「ん?どうした、レナエル?」
「いえ、何でもありません。それよりもルイ。新エリアの解放とレベルキャップの解放が行われたようですよ」
「へぇ?」
急にレナエルが眉間にシワを寄せてメガネに手を添えたので何事かと訊ねてみたら、
「それより、もうすぐ到着するぞ。荷台のみんなを起こしてくれるか?」
「それよりって…。転生者ルイ?レベルキャップ解放はまだしも、経験値アップは貴方が他の転生者に追いつくためにも大切なことですよ?私の教えを
「ごめんごめん、あとでちゃんと見とくから。決して先生の教えを蔑ろにしてるわけじゃないんだよ。みんなも準備があるだろうし、早めに起こした方が良いと思ってな。いつもありがとな、レナエル」
「む。ま、まぁ仕方ありませんね。感謝の気持ちがあるなら良いのです。天使使いが荒いのも今回は許すとしましょう。この件、ちゃんと復習しておくのですよ?」
ちょっと照れた顔のレナエルが、御者台から荷台へと続く入口へ消えていく。
危うく説教が始まりそうな雰囲気だったが、何とか回避することができたようだ。誤魔化してるのは、ちょっと悪い気がするけど、本当に、たぶんもうすぐ到着なのである。
トルヴから南東に延びる街道は、途中に整備されていない道をはさみながらエットへと繋がっている。さらにその途中で道とも呼べないような東寄りのルートをとることでヌル近郊にたどり着くことができる。当然、初めて通る道だ。山合から山道、さらには木立ちに囲まれた平坦な道へ、次々と変わる風景を楽しむことができた。
しかし今、目の前には見渡す限りの草原と丘陵が織りなす風景が広がっている。行けども行けども代わり映えの無い風景であるにもかかわらず、草と土の混じり合ったような匂いと、それを運んでくる柔らかい風さえ何だか懐かしくて、そうそうこれこれって感じで心地良い。
トルヴを旅立ってからしばらくの間は、かなりの頻度で敵が現れていた。俺がルカに乗り、馬車に先行して露払いをしないと、ろくに進めないほどだったのだ。そんな接敵の頻度が、ここ数日少なくなっていた。特にこの数時間は、敵の姿も見ていないほどなのだ。おそらく、ヌル近辺の魔物が少ないエリアに入ったものと思われた。
少し余裕ができたのでルカは送還し、俺が御者をしてレヴィとシャロレの二人は荷台で休んでもらっている。ハーピーの羽毛で作った大きめのクッションや寝具は、どうやら気に入ってもらえたらしい。先程レナエルに様子を見に行ってもらったときに、二人ともぐっすり寝ていると聞いたので、そのまま寝かせておいたのだ。
「っくぁあぁぁ。…おはよ。お任せしててごめんなさいね。大丈夫だった?」
「おー。特に問題なかったぞ。平和なもんだよ」
「馬車の乗り心地も良かったけど、ルイが作ってくれたお布団?が気持ちよくって。グッスリだったわ。それにしても…家事に裁縫に、御者までできるなんて貴方、何でもアリなのね」
荷台と御者台の連絡口から眠そうな顔を出したレヴィ。スプリンクルハーピーのふわふわ胸毛で作ったおふとんに満足していただけたようで何よりだ。にも関わらず起き抜けに、どこか責めるような口調で呆れられたわけだが。
当初はヌルへの道中で、レヴィから馬車の扱いを学ぶ予定だった。ところが、ルカとの旅で増し増しに上がっていた騎乗スキルは乗り物全般に適用されるらしく。ほとんど学ぶことが無かったのだ。
基本的なことは教えてもらったけど、指示出しのコツや制御、走路の選び方などは何となく補正が効いてるみたい。ごく自然に、快適な馬車の制御ができている。
「何でもってわけじゃないさ。たまたまだよ、たまたま。お?あぁ、見えた!あれだよあれ!あそこ!」
「え?どこ?ただの森にしか見えないけど?」
街道が続く先の傍らに、何の変哲もない森が見えてきた。低木が密に生い茂り、入口らしいものは獣道すら見当たらず、森の向こうには山が広がっている。何の用も無い普通の人ならば、敢えて分け入ろうとは思いもしないような場所だ。
ゆっくり減速して到着。戸惑うレヴィと、同じく起きてきたシャロレに降りてもらう。森の入口から少し離れた場所に、木々に囲まれた丁度いいスペースがあったので、馬車を突っ込み軽く草木で隠蔽しておいた。
馬は馬車から解放して、エサと水をあげたのちに軽くブラッシングして労をねぎらい、手頃な木につないでおくことにする。
「さ、行こうか」
「行こうかって…確かにヌルに行く前におばあさまの家に寄るって言ってたけど…。繁みしかないわよ?」
「この繁みが入口になってるんだ。先に入るから付いてきてくれ」
そういってガサゴソと繁みを分けて森に入った、のだが・・・。
「おぉい!付いてきてくれって言っただろ!ビックリするから!ていうか寂しいから!!」
「えぇ!?あれ?ルイ、居たの?」
「居たのって!?居たよ!さっきから居たよ!!お前とレナエルとレヴィとシャロレを馬車でここまで運んできたの、俺だよ!?急にそんな放置プレイされたら涙がでそうになるぞ!?」
「あ、いえ、ごめんねルイくん。そうじゃないの。あのね…」
繁みを分け入って森の中に出てから振り返って見ると、誰も付いてきていなかった。しばらく待ってみたのだが誰も姿を見せる様子がなかったので、慌てて戻り、元の繁みから外へ出る。不意打ちでスルーされたのと、久しぶりのボッチな扱いに衝撃を受け、かなり動揺してしまった。
みんなの説明によると、俺に続いて繁みに入ってはみたものの、抜けた先には俺が居なかったのだとか。それどころか、先に進む道さえ見当たらなかったそうだ。そのため、繁みの中で別方向に分かれたのかと思い、いったん戻ってみることにしたらしい。そうして街道へ出てきた矢先、俺が飛び出してきたとのこと。
「んー?繁みの中は一本道のはずなんだけどな?」
「えぇ。あたしたちも別に、変な方向に進んではいないはずなんだけど…」
状況は理解したので、もう一度試してみた。しかし先程と同様、繁みの向こうで合流することはできなかった。…ので。
「仕方ないのは分かるんだけど、ね。こういう機会って、あんまり無いから。何となく、あたしは、ちょっと、恥ずかしいっていうか…」
「ふふっ。私は嬉しいかな。別に理由なんか無くても、たまにはみんなで、こうして歩きたいな」
「両手が
3人で、手をつないで入ることになった。
俺とはぐれたら入れないのでは?という予測の元、レヴィとシャロレがそれぞれ俺の片手を握って、空いた手で繁みをかき分けてくれている。俺は両手を握られているので連れられるままに歩いている状態だ。
”両手が塞がるのがダメなら魔物に襲われないような街中とか?それか、レヴィと1人ずつ交代交代で手をつなぐとかなら良いよね” などとシャロレが言っているが聞こえないフリをしておいた。
なお天使二人は俺の両肩に乗っている。レナエルが ”なるほど。触れていることが条件ならば…” とか言い始めた結果なのだが、両手両肩女の子フル装備みたいな状態で落ち着かないし歩きにくい…。次回からは他の手段を考えたいところだ。
繁みを抜けた先の風景が、みんなにとって初めて見たものだそうなので、この作戦は成功したようだ。シンアルに初めて連れてきてもらった時は普通に後から入っただけで大丈夫だったんだけど…何か違いがあるんだろうか。
新たな疑問が生まれたものの、今はこの先へ早く進みたい。はやる気持ちを抑えつつ、懐かしい獣道を踏み分けていく。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。