第24話 杖術の仕上げ?


「さぁ、錬金術は一区切り終えたんだ、杖術もここいらで仕上げといこうか」


 いつもの河原に来た。基礎で1年、攻撃を教えてもらえるようになって1年、もうすぐ15歳を迎えるが、何とか間に合ったらしい。いやいや油断は禁物、安心するのはちゃんと仕上げを終えてからだ。


「今日は魔法についてだ」

「ぇ?」


 杖術の訓練を受けるつもりで河原に来たので、魔法と言われて呆気にとられた。ここに来るまでに、いやさっきもバルバラは杖術って言ってたはずだ。


「何だい、いつも通りの変な顔して」

「いや、杖術の仕上げだろ?ここまでで、一息に2連突きとか、回転撃とか、最大威力で地面を打ち据えるグランドインパクトとか教えてもらってきたんだ。当然、仕上げも巨大な岩を割るとか、バルバラに一撃でも与えるとか、それ系じゃないのかって想像してたんだけど」


 俺がそう言うと、バルバラはため息をついた。


「ルイでも分かるように改めて教えてやるが、武器はそれぞれに熟練度がある。昔お前が質問してきたような、職業ごとに装備できる武器が決まってる、なんてことはない。戦士も杖を装備できるし、熟練度を上げられるし、魔法を使える。基本的には適性がないから、他の職で熟練度をあげた方がいいだろうがね。杖の熟練度があがれば、魔法の威力があがったり、職業に応じて新しい魔法を覚えたりする。あんたの杖の熟練度は相当なもんさ。もう、それなりの魔法が使えるだろうよ」


「あ、あぁ、それは分かったが、今の話だと職業に応じて、だろ?職業が家事手伝いじゃあ魔法は覚えられないんじゃないか?」

「そこは裏技というやつさ。条件次第で、魔法を他人に教えてやることができるんだよ。シンアルやあたしは、その条件を満たしている。ちなみに、あたしの魔法はシンアル仕込みだ。回復系の最高レベルの呪文まで教えてやるよ」


 そういうと、バルバラは俺の肩に杖を軽く振り下ろした。


回復ヒール。どうだい、杖から直接魔力の流れを感じるだろう」


 確かに、肩に触れた杖の頭から、不思議な力が流れ出して体中を巡っていくのが分かる。同時に、ヒールの使い方が頭に刻み込まれたようだ。


「さっきも言ったが、本来、魔法は適切な職業に就いて、杖の熟練度を上げて覚えるもんだ。剣とかのスキルも同じさ。戦士が剣を使い、熟練度をあげれば、段階に応じてスキルを覚えられる」


 さすがファンタジーというか、魔法を使う際や武器のスキルを使う際、使いたいと思った時に身体は自然と動いてくれるそうだ。


 なおこの時、重力に逆らった動きや筋力量からはあり得ない動きでも、体内の魔力や自然界のマナがサポートしてくれるらしい。武器のスキルも、使えるようになったら楽しいんだろうな…あれ?回転撃?グランドインパクト?あれは…。


「1日で全部は無理だろうから、何日かに分けて教えるよ。まずはヒールからやってみな」


 おっといけない。今は魔法に集中しよう。この世界で初めての魔法の練習だし、ヒール以外にもどんな魔法があるのか楽しみだ。ワクワクしながら、新しい知識と技術の訓練を受けた。

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