第6話

タクシーで帰る自宅までの道のりが長く感じた。

窓の外はいつの間にか雨が止んでいた。

彩綾は玄関の前で自分の顔を鏡で写し高ぶる感情を落ち着かせて扉を開いた。

暗い部屋の灯りを付けると寝室から慶介の声がした。

「どうしたの。遅かったじゃん」

「ごめんね。ちょっと友達と盛り上がっちゃって」

「お風呂入ってくるね」

彩綾はそそくさと浴室に向かった。

慶介は何かを疑う事もなく

「明日も仕事なんだから早く寝なよ」

と言って眠りについた。

彩綾はリビングのソファーに横になり

「無事着いたよ。旦那さん大丈夫だったよ」と音羽にLINEを送った。

「彩綾は僕の彼女で良いんだよね」

そんな音羽の返信に簡単じゃない感情が交差し返信出来ないでいた。

そう私は既婚者でこれはしてはいけない事なんだ。

引き返す事のできない想いを抱えて沙彩はソファーで眠りについた。

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