第5話
音羽の家を訪ねたのはそれから1週間後の事だった。
音羽は母親と2人暮らしだった。
一年前まではこの家で三年間結婚生活をしていた。そんなまだ建てたばかりの音羽の家は木の匂いがした。
手料理を振る舞ってくれると友人と招かれた彩綾はキッチンに立つ音羽を見つめながら込み上げてくる気持ちを抑えきれないでいた。
2人は目を合わせては恥ずかしそうに笑い合った。
お互い答え合わせなんてしなくても同じ気持ちでいる事を確信していた。
友達が帰った後もテーブルの隣同士に座りワインを飲みながら尽きない会話をした。
そんな時だった音羽がさっと彩綾の足をすくって自分の膝の上に乗せた。
それから2人は長い間キスをした。
彩綾はもう気持ちを抑える事ができなかった。
「ベットに連れてってくれないの?」
その言葉ごと抱き抱える様にして音羽は彩綾を寝室に連れて行った。
天井の高い音羽の寝室で2人は初めて愛し合った。
外からは雨音が聞こえていた。
あの時の2人はただただ素直に抑えきれない感情を抱きしめ合った。
初めて手を繋いだ時の肌と肌が吸い付く様な、プラス極とマイナス極が引き寄せられる様な今まで感じた事のない感覚を感じてお互い愛おしさが溢れた。
PM 2:00
「もう帰らなくちゃ」
彩綾は何度も鳴っていた携帯を気にしながら服を着た。
タクシーを見送る音羽の悲しそうな目が切なくて心が締め付けられた。
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