第2話
あれは1年前だった。そう忘れもしない5月14日…。
私の人生が彼との出逢いで大きく変わった。
1年前の私は歯科医師である主人と何不自由なく暮らしていた。
満たされてないわけではなかったし幸せだった。
口論になると手を挙げる事が何度かあったがこの生活から逃げ出したいと思った事は不思議となかった。
5年の結婚生活の中で作り上げられた目には見えない繋がりがそうさせていたのかもしれない。
歯科医師である主人は私とは2度目の結婚だった。前妻との間には2人こどもがいたが私は会った事はなかった。
私と主人は出会って3ヶ月で一緒になった。一回り年上の主人は歯科医師のイメージと違い何だか子供っぽくて
話し易い穏やかな印象だった。
元々親しかった先生の紹介で一緒に飲んだのがきっかけだった。
彼の両親も歯科医師だった事もあり家業を手伝う為に私は歯科衛生士になった。仕事がない日は2人で旅行に出かけたり飲みに良く行った。
お互いブランドが好きで買い物にも良く出かけた。
周りの友人からはセレブ扱いされていたし羨ましがられる生活を送っていた。
私にとってもお金に不自由のない生活は夢だったし何の不安もない毎日に空虚感などまったく感じた事がなかった。だから手を挙げられる事との天秤にかけた時この生活がなくなる選択など考えた事もなかったんだろう。
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