第19話 From now on(19)
沙耶を家に送り届けた後
結城はもう一度お台場まで来てしまった。
あゆみはまだイベント会場にいた。
それに気づいた彼女は
「・・まだ・・いたんですか?」
ちょっと迷惑そうに言った。
「ね。 終わったらメシ、行かない?」
結城は軽く誘った。
あゆみは彼から視線を逸らして、
「え・・いいです。 そんな、」
思いっきり拒否をした。
「メシくらい。 いいじゃない。 ああ、気にするならワリカンでもいいから。」
またも見透かしたように言ってくる彼にちょっとむっとして、
「・・そういうことじゃなくて。 ・・正直、メイワクです。
と、言ってしまった。
「仕事中ですから、」
あゆみはスッとその場を離れてしまった。
子供向けのイベントといいつつ、こういうコンパニオン目当てのカメラ小僧なんかもいて。
彼女たちはその標的になっていく。
スタイル抜群でアイドルばりの容姿のあゆみは特にそのターゲットになっているようだった。
夕方になりようやく仕事を終えて帰ろうとする彼女の前に、結城は笑顔で立ちはだかっていた。
「なっ・・まだいたんですか!」
ギクっとした。
「ヒマだったから。」
タバコを吸いながら言われて、
「だからっ! メイワクだって、」
あゆみは無視して立ち去ろうとした。
「だいじょぶ、だいじょぶ。 もっと気楽に考えて。 下心とか別にないし。 ユーリのお姉ちゃんとしていてくれればいいんだから。 」
あゆみは肩から提げたバッグの取っ手をぎゅっと握って、
「・・困るんです、」
うつむいてそう言った。
結城はすかさず、
「困らなくていい。」
きっぱりと言った。
「え、」
彼を見上げた。
「もっと楽しいこと考えていいんだって。 困ることなんかひとつもない。 どうせなら人生楽しい方がいい、」
魔法にかけられたような
そんな気持ちだった。
「夜の方がキレイだね、」
昼に来たレストランにまた来てしまった。
レインボーブリッジが光を放ち、まったく違う風景だった。
あゆみはまだ緊張した面持ちだった。
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