第18話 From now on(18)
「無理って、」
あゆみは少し焦った。
「昨日だって、平気・・みたいなこと言ってたけど。 なんか疲れてるもん、」
結城はいつもの笑顔で言った。
「つ、疲れてなんか、」
「身体じゃなくて。 心が、」
何もかも見透かしたようなように言われた。
あゆみはそのとき
体中の力が全て抜けていくかのような気持ちになった。
「大変なんだろうと思う。 物理的なことは何となくわかる。 でも・・しんどいとか、思うこともあって当然だし。 無理して笑顔を作ったりするともっともっとつらくなる。」
心の中が
ものすごくモヤモヤした。
「肩の力を抜いて。 楽しいって思って毎日を過ごせれば。 ・・一番いいよね、」
結城は窓の外の風景を見やった。
少しして沙耶が
「・・お姉ちゃん・・泣いてるの?」
と言った声で結城は彼女を見た。
あゆみはポロポロとこぼれてくる涙を必死に堪えようとしていた。
「ごっ・・ごめんなさいっ! なんか、」
慌ててハンカチでそれを拭った。
胸がいっぱいになって。
そう言いたかった。
結城は少し驚いたように彼女を見た。
「・・も、もう休み時間終わっちゃうから。 あたし失礼します、」
あゆみは自分の食べた分のお金を財布から取り出そうとした。
「ああ。 いいよ。 そのくらい、おごるし、」
結城が言うと
「いえ。 別に・・結城さんにおごっていただくような、」
千円札を1枚テーブルの上に置こうとした。
「だから。 甘えなさいよ。 おれも年上の男として。 きみに払わせるつもりないし。 貸しだとかぜんっぜん思ってないから。」
あゆみはまた結城を見た。
「いいから。」
結城は笑顔で優しく言った。
「ねえねえ。 なんであのお姉ちゃん泣いてたの?」
沙耶は結城に言った。
「ん。 あのお姉ちゃんはね。 人に甘えることができないんだ。 すっごく苦労してて。 お父さんとお母さんが事故で死んで。 年の離れた弟と頑張って生きてる。 頑張って、頑張りすぎて。 ちょっと心が疲れてるんだと思う、」
結城は妹に言い含めるようにそう言った。
「・・お父さんとお母さんが死んじゃったの? かわいそう、」
「人に優しくされると。 きっと困ってしまうんだ、」
結城はその言葉を自分に言い聞かせるように少しモヤって見えるレインボーブリッジを見やった。
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