天咲塔の三日目と大樹 4
「……どういうコトだのん?」
「まず、先ほどと同じ『
「その一瞬を狙い、もう一発の『雷砲』を放つのです。初めて目の当たりにしましたが、ニクリさんの『
ニクリは一瞬だけ顔を晴れさせたが、すぐに思案顔に戻ってしまった。
「やはり、連発は無理ですか?」
キョライの問いかけに首を振るニクリ。
「連発はできるけど、少し時間が要ると思うのん。さっきのカンジだと、おっきい樹に二回目を当てるのは間に合わないかもしれないのん。それに、短いあいだの連発なんてやったことないし、集中と気力が……」
「やるしかないのん……。クミちんを助けられるのはリィだけだのん。リィのありったけ、見せてやるのん!」
少女の意気に、覆い布の下、キョライは口元を緩ませたようだった。
「助力となる案があります」
「……助力?」
「一発目の直後、私の『
ニクリらの横穴から樹まで、距離にして数十歩ほどは開いている。
「雷電」の速度はまさしく落雷のごとしとはいえ、発射から着弾までには
「ですがそれには、ニクリさんが私を信頼し、身を預ける必要が……」
「お願いするのん!」
キョライの口元はまたも緩んでしまう。
最初に「コウモリ」の襲撃に遭った際、あれほど嫌がっていた「『何処か』に入るコト」。だが、小さなネコのため、そのような
そして――。
「ヤ行・
ふいに背後で上がった「ヤ行・
ニクリは自らに気力が
俗名にヤ行の魔名をもつ教主フクシロが魔名術をかけてきたのだ。
「若干で申し訳ありませんが、これでいくらかリィ大師の
「大助かりだのん!」
「やるなら早くやって!」
ひとり、波導の「超音波」を放ち、「コウモリ」を墜とし続けていたニクラが言葉を
「クミも私も、いつまでも元気でいられないんだから!」
姉の怒鳴りつける声。
最愛の姉が「頑張れ、リィ!」と付け加える声。
ロ・ニクリ。
屈託ない性根の少女。
小さな仲間を助けたいという、
波立つ想い。
仲間に導かれ、少女の波が高まる――。
「初めのッ!
放たれる雷の砲。
「行きます!」
「のん!」
初発の成果を見届けもせず、姿を消すニクリとキョライ。
「はじめの雷砲」は黒い大樹に直撃し、「コウモリ」の壁を散らし消した。
直後、露わになった樹皮を目前、空中に現れ出でた
突如現れた接近者を払い落そうと大樹の枝が迫るが、出現と同時、少女はすでに平手を構えていた――。
「次のッ!
放たれた次弾。
雷鳴と轟音の発生とほぼ同時、塔全体が揺れるほどの衝撃と破壊音が轟いた。
少女に迫り来ていた枝、そして、樹皮に取りつくため集まり出していた「コウモリ」も巻き込まれ、消失。
守りの外壁が失われていた大樹には大穴が開けられた。向こう側が見えるほど、完全なる貫通――。
「まだだのん! キョライさん!」
「はい!」
姿の見えないキョライの応じ声とともに、縦穴を落下し始めていたニクリの姿が消える。
次に彼女が姿を現したのは、開けたばかりの大穴の
片手を上に、もう片方を下に向けた立ち姿――。
「最後の!
上下に放たれる雷の槍。
大樹を縦に貫く
大樹は絶命した。
それを如実に示すかのよう、まとわりついていた「コウモリ」が一挙に、
はじめて露わになる大樹の全容。
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