少女の才覚と二色髪 2
それにつれ、彼女の「
「メルララ様……!」
「こ、
それはまるで、実直な附名術者に存在ごと拒否されたようであり、美名の心はひどく打ちのめされた。
「メルララさんっ! なんてことを!」
「あ、ああ! ああ! 美名様、申し訳ありません、申し訳ありません! ああっ! 私……」
「いえ……」
美名の手を取り直し、祈りを捧げるように
「メルララさん……。『ワ行の光』を見たのですね……?」
クメン師の問いに、後輩の附名術者はむせび泣きながら頷く。
「
この問いには、彼女は力無く首を振る。
「ありません、ありませんでした……!
「『ワ行の光』は……『
附名の術者同士の会話に困惑している美名に対し、クメン師は説明をくれた。
「ア行・命名」の魔名術――。
それは、「ヒトの才覚」を見抜く魔名術である。加えて、附名の門外では極秘だがと前置きして教えてもくれたのが、「どんな行の魔名でも授けること自体は可能」だということ。
しかし、だからといって無闇に魔名を授けるわけにはいかない。それにはふたつの理由がある。
ひとつ、ひと度授けられた魔名は、解消することも、変更することもできない。
ひとつ、「才覚」がなければ、いくら練達に励もうが魔名術を高められない。
ゆえに「名づけ師」とは、「命名」で対象者の才覚を見定め、適切な魔名を見出し、「
では、「ヒトの才覚」とは?
それは、「命名」の術者に「光」となって感知される。
色の種類は「
色の強さは「才覚の高さ」を。
色の数は「持ち得る才覚の数」を現わす。
それを見た「名づけ師」は――あるいは、対象者家族の稼業や、本人の意向なども加味しつつ、「名づけ」を為すのである。
「『命名』で見える光の種類は……、白、赤、黄、緑、紫、灰、桃、
「では……私の魔名は……、魔名術の才覚は……」
「……『ワ行劫奪』に……なりましょう」
美名の胸の中、湖面に墨を垂らしたように、「黒」が拡がっていく。
居坂のヒトにとって、「ワ行劫奪」とは特別である――。
「美名さん。勧めておいて非常に心苦しいのですが……、一度、考えましょう……」
「クメン様……」
「
加えるなら、美名には身近に――
「……このまま『ワ行』の魔名を
「覚悟……」
クメン師の言う「覚悟」が、自らに備わっているか?
今はただ当惑するばかりで、その自問に首を縦に振りきることができない美名は、クメン師の保留の勧めに、「はい」とか細く応じたのであった。
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