第3話
「ここまで来ちゃったのね……赤ずきんちゃん」
周りを山と森に囲まれた野原に水色の洋服を来た金髪の少女が一人で立っていた。
不思議の国のアリス。
ふわりと風が吹き、アリスの美しい金色の髪をさらさらと揺らしている。
「探したよ……アリス」
赤ずきんちゃんがそう言うと、アリスがにこりと微笑んだ。
そして、一歩赤ずきんちゃんへと近づくとくるりと背を向けた。
「こんな所まで来て、何の御用かしら?」
「とぼけんなよ、アリス。お前、あいつらの計画に加担してんだろ?」
「ふふふ……知ってたんだぁ……ねぇ、チェシャ猫、秘密を知られてるわ……」
アリスがそう言うと、また風がふわりと吹いた。すると、誰もいなかったアリスの横に趣味の悪い派手な格好をした若い男がニヤニヤとした笑みを浮かべ立っていた。
男は顔一杯に大きな口を横に広げて笑っている。
靴は紫、被っている帽子はピンク、全身はピンクと紫のボーダーの洋服を着ていた。
「いやいやぁ……赤ずきんちゃんは物知りさんですねぇ……」
「ふん、お前がアリスを唆したのか?」
「怖い怖い……そんな顔をしないでください。確かに誘ったのは僕ですが、選んだのは……アリス本人ですよ?」
人を食った笑いを浮かべるチェシャ猫に苛立ちを隠せない赤ずきんちゃんがMG4をチェシャ猫に向けて構えた。
「おやぁ……そんな重火器振り回すおつもりですかねぇ?アリスにも当たっちゃいますよ?」
チェシャ猫がそう言った時である。
突然、アリスがチェシャ猫の体を突き飛ばした。チェシャ猫が立っていた少し先に銃弾が被弾した。
そのまま、突き飛ばされずにチェシャ猫が立っていたなら、確実にこめかみを撃ち抜かれていただろう。
遅れて微かに銃声が聞こえた。
余程の距離から狙っている事が分かる。こんな事が出来るのは、
「危ない危ない……」
「……油断は禁物……」
チェシャ猫の背筋にぞわりと冷たいものが走る。
いつの間にか背後にグレーテルがナイフを突きつけ立っていたのだ。
「……お兄様のマクミランTAC-50は3,540メートルの距離からでも戦闘員の頭を撃ち抜いた実績のある狙撃銃……そして……お兄様の天才的な狙撃手としての腕前……逃げられませんわよ?」
「……ふふふ、折角
そう言ったチェシャ猫の体がゆらゆらと揺らめいたと思った瞬間、グレーテルの腹部へと強烈な蹴りが入った。
そして、動きを止めることなく、飛ばされたグレーテルへと攻撃を仕掛けるも、さっと直ぐに飛び退いた。
チェシャ猫の頬をヘンゼルの銃弾が掠めたのだ。
「良い腕してるねぇ……君の兄さんは。止まっていたら、直ぐに撃ち殺されるね♡」
再び、ゆらりと揺れるチェシャ猫。
構えるグレーテル。
しかし、グレーテルの想像以上のスピードであるチェシャ猫の動きに防戦一方となってしまっている。しかも、チェシャ猫は上手く自分の体を木の陰に置き、ヘンゼルの死角になる様に計算して動いている。
『……どうにかして動きを止めなきゃ……』
グレーテルの思いをよそに、チェシャ猫の攻撃は激しさを増し、兄からの援護射撃も受けれぬまま、グレーテルは防戦もままならない状況となってしまっていた。
『……お兄様……』
ぐらりとグレーテルが倒れていく。
うつ伏せのまま、地面へと倒れてしまったグレーテルの頭をチェシャ猫が踏みつける。
「あははははっ!! 兄の援護も無いとその様ですか?情けない……兄も兄よ、陰に隠れてコソコソと狙い撃ちしか出来ない……二人で一人の半人前が……
高々と笑いながらそう言うチェシャ猫の顔が苦痛で歪む。
頭を踏まれていたグレーテルがチェシャ猫の軸足の甲へナイフを突き立てたのだ。地面へと縫い付ける様に力一杯根元まで突き刺した。
「……!!」
「……これで逃げられない……貴方は……ここでお終いよ……」
グレーテルがそう言い終わると同時に、チェシャ猫のこめかみをヘンゼルの銃弾が撃ち抜いた。
大きく横へと傾くチェシャ猫の体。
しかし、足が地面へと縫い付けられているため、ぐにゃりくにゃりと変な人形の様な動きをした後、仰向けに倒れていった。
「……終わりです……お兄様」
グレーテルはそう言うと、チェシャ猫の足からナイフを抜きホルダーへと納めた。
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