月桂樹の花

風野比津斗

序章

館に連休を使って来た。

最近はなかなか休めない日々が続いていたのでこの機会が大変好ましい。

といっても、ただ単に働き勤めで疲労がたまったってだけだけど。…まあ、一応上司にも言ってるし、いいよね。

ただ、有休を使っちゃったのが痛いな。しばらくは軽い風邪でも休むのは我慢しなくちゃな。

ちなみに、この旅行には僕以外にももう一人いる。それがこの

「おい。私のバッグをとれ。お前が一番近いからな。早くしろ。」

…この、口が乱暴な女性は『後端伊須(ごたんいす) 手結(てい)』という。今更な気もするが、凄い名前だと思う。

ていうか、この人は本当に日本人なのだろうか。いや、名前だけではなくて。結構に。大真面目に。

この人はなぜか、毎回僕の家に土足で上がってくるし、英語はとても流暢に話せるし。いや、そのくらいなら何ら問題はないのだけれど。その…なんというか、あの…あれなわけですよ。その…ボディが…ボンッ、キュッ、ボン!なわけで。いや、ホント、レベルが違うのですよ。これが日本人であるのならそれはそれは発育のいい親に産んでもらい、いっぱい牛乳を飲み、そして沢山揉みしだk…いや、やめておこう。なんか隣からの視線が痛いので。

「おい。何している。早くしろ。ぶっ飛ばすぞ。」

怖ッ。っていうか、そっちか。良かった。ばれてなくて。

「あぁ、ごめんなさい。ちょっと考え事をしていまして。」

僕は左奥に少し離れて置いてあるバッグを手に取ると、しばらくそのバッグを上下していた。

「なんだ。私のカバンがそんなにダンベルに見えたか。まったく。これだから脳筋は。」

「いや、そういうわけじゃなくて。なんか重いなって思いまして…っていうか、僕筋肉ないし!なんですか?飛行機に乗ってさっそく皮肉を吐くのが趣味なんですか!?」

「いや、私にそんな趣味はないが。」

「真面目に答えなくていいです!」

まったく…これだから手結先生は。

そう、この後端伊須手結は、自己中であり、変人であり、そして、


「はあ…何でこんな人が“探偵”なんかやってるんだか。」


生粋の“迷探偵”である。

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月桂樹の花 風野比津斗 @koaranisimura

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