2着目 娯楽の少ない人生を送ってきました
うわぁ、この天使ドSだわ……。
そして推しが
チャット爛では、リエルの【レビ虐(いじ)】の手際が神懸ってると大盛況。次から次へとコメントが投稿され、流されていく。
「分からん……なんで好きな
「えー? いや、まぁそういう文化としか言えないかなぁ」
「奥深し、Vtuber……」
「そんな深い意味はないんだけどなぁ~。はじめってホント浮世離れしてるよな」
そうだなぁ。
俺の前職は、ファッションデザイナーだった。
母親が日本最高峰のファッションブランド【
そして15の時に、母のコネで
市川は金色に染めた髪を後ろに流しながら、転校当時の俺の様子を語っていた。
「いやー完璧ガラパゴスの住人だったよな。
「その節はどうもお世話になりました」
俺は感謝の意を込めて深々と頭を下げる。
すると市川は「真面目か」ってまた笑った。いや、でも冗談抜きで市川がいなかったら、俺、間違いなく高校生活に馴染めなかった。
それに、市川がレヴィアたんを布教してくれなかったら……この世界を知ることもなかった。
カキィン! という音が鳴る。
カーピィの振るう木槌がガノンゼルフを吹っ飛ばした。
『あっ! やった! やったやった倒した! 倒せたよ! アドバイスくれた眷属達ぃー! ありがとぉーーー! ほんとにほんとに、ありがとぉーーーー!』
ありがとうと連呼して、無邪気に喜ぶレヴィアたんが微笑ましくて、目を細める。
所詮は他人事。他人がゲームをやってるところを眺めてるだけなのに。
なんで、こんなに癒されるんだろうな。
「市川ぁ」
「なんだー?」
「――ありがとな、俺にレヴィア様を教えてくれて」
「大げさだなぁ。市川さん、照れちまうぞ。……まっ、そこまで言ってくれたら布教した甲斐があったわ」
市川はおどけるように肩をすくめてみせた。そのタイミングで放課後に居残った生徒に『帰れ!』と告げるチャイムが鳴り始める。
だが配信はまだまだ続く。なら……後は分かるよな。
市川の顔を見て、俺達は言葉無しに頷き合う。
帰るわきゃねぇだろが‼
『はーい、それじゃあ後9勝です! 頑張ってくださいね、レヴィア様ァ? リエルも張り切っちゃいますからァ~♡』
『ふっ、魔王を降した
『レヴィアたん、
『手加減してください……お願いします。手加減を! 慈悲を! 愛をくださいぃぃ~~~!』
刹那、宵月レヴィアの眷属達は一様に悟る。
俺達は揃って、なけなしのバイト代を赤いコメント欄に変えた。
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