第1話 始まりのナイトメア

 真っ直ぐに差した初夏の昼の日にさらされ眠りから覚めた。

 唯一見る夢。あまり夢は見ない方だが、たまに見る時は必ず同じ夢を見る。

 けっして楽しいものでは無い。


 憂鬱な気分で体を起こし、手首のブレスレット型端末を起動させる。

 一般的にホログラムと呼ばれる空中映像に表示された時計は、もうすぐ授業が終わり昼休みが始まる時間を示していた。

 いつも通り廃倉庫で授業をサボった。


 一息ついて立ち上がり、埃を払う。

 寝ていたところは潰れた草が日に照らされていた。


 何か違和感を感じる。それが何かはすぐにわかった。

 古い鉄製の建物が軋み揺れ出す。地震だ。それと共に地面が謎の光を発する。

 急いでそばに置いてあった黒いアタッシュケースを取り、一階に飛び下りる。


 そのまま廃倉庫を飛び出すもすぐに足を止めた。いきなり激しい頭痛に襲われたのだ。

 片手で頭を押えながらその場に座り込む。


「……ット……ケ……」


 何かが聞こえた気がした。


「……ッ……ミ……ケ……」


 気のせいではなかった。

 何を言ってるかは分からないが、頭の中に直接聞こえてくる少女の声。

 何度も繰り返されるそれは段々と大きくなるが、その度に痛みも、地面の光も揺れも強くなる。日差しですら強くなったように感じた。


「……ヤット……ミツケタ……!」


 やっと見つけた。

 そう認知できた時、彼――小坂悠斗こさかゆうとは全てが終わったかのように何も感じられなくなった。

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