第4話 ダンジョンとは

 ダンジョンとは人々にとって最大の脅威であり、逆に最も恩恵を与えてくれる存在でもあった。


 ダンジョン内では貴重な鉱石が採掘できたり、出現する魔物を倒す事によって魔石が手に入る。

 魔石や鉱石は人々の生活必需品となっており、大きな魔石は保有魔力も高く、高値で取引されていた。


 冒険者達はダンジョンにアタックする事によって、貴重な鉱石や魔石を入手し、それをギルドに卸す事によって生計を立てていた。


 当然魔物は強く、油断をすれば怪我もするし、実力がなければ死ぬ事もある。

 けれど命を懸ける分のリターンがダンジョンにはあった。




★   ★   ★




 現在ダンジョンはSS・S・A・B・C級と難易度によって区別されており、高難度になるにつれて構成されている階層の数も増えていく。


 出現頻度にも違いがある。

 SS級ダンジョン。

 最高難度に指定されているSS級ダンジョン。今まで五組の冒険者パーティーしか攻略出来ていない。

 数十年に一回の割合で出現し、構成階層は五十階層。


 S級ダンジョン。

 ギルドにS級冒険者と認められれば、発行される証明カードを提示する事により、何処の国にでも自由に出入りが出来る様になる。

 世界各地に現れるS級ダンジョンがそれ程までに危険で、攻略出来る冒険者が少ないという証明でもあった。

 十年に一回の割合で出現し、構成階層は四十五階層。


 A級ダンジョン。

 攻略出来れば上級冒険者と認められる高難度のダンジョン。A級パーティーが何組所属しているかで、各ギルドの発言力が大きく変わる。

 一年に一回の割合で出現し、構成階層は四十階層。


 B級ダンジョン。

 ギルドに所属しているベテラン冒険者達がこぞって狙うダンジョン。

 取得できる鉱石や魔石もB級ダンジョンには上質な物もたまに出現している。

 二、三カ月に一回の割合で出現し、構成階層は三十階層。

 

 最後はC級ダンジョン。

 組織力の無い、野良冒険者やギルドに所属しているルーキー達が狙うダンジョン。

 月に一から二回の割合で出現し、構成階層は二十階層。


 出現頻度も構成階層にも多少の誤差はあるが、大体はこの通りであった。


 またダンジョンの内は各階層によって形態や広さがガラリと変わる。

 大迷宮であったり、草原であったり、または森林だったりもする。

 要するにその階層ごとに攻略方法が全然違ってくる。

 その為、高難度のダンジョンの場合は事前の準備がダンジョン攻略の鍵にもなってもくるのだ。


 最下層の最奥の部屋にいるダンジョンマスターを倒せれば、その後ダンジョンは魔物を産まなくなり、数日を掛けて少しづつ自然崩壊を始める。

 そしてまた違う場所で新たなダンジョンとして出現するのだ。


 基本ダンジョンは人口が三十万人を越える大きな街の半径五十キロメートルに出現する事が多い。

 仮説だが、繁殖期はんしょくきに魔物が人間を襲う為とか言われているが、ハッキリとした理由は解明されていない。

 なので大きな街には必ず冒険者組合が設置され、また数多くのギルドが存在していた。


 もしダンジョンを攻略せずに放置しておくと、繁殖期はんしょくきと呼ばれる一カ月の間、ダンジョンの中で魔物が大量に産まれ続ける。

 そしてダンジョンに納まりきれない魔物達が地上へと這い出て人々を襲うのだ。

 


 なので危険性の高いダンジョンは発見されしだい国が入り口を封印する。

 封印方法は大岩と石灰土を練り合わせて、固く分厚い壁を作り魔物を外に出さない様、昼夜問わず管理していた。


 冒険者組合で許可を貰った冒険者パーティーだけが、常駐している兵士にプレートを見せる事で出入り出来る様になっていた。

 こうやって出入口を封印しておけば、繁殖期の間、魔物を外に出してしまう恐れが無い。


 しかしダンジョンを封印するには費用と維持費がかかる為、出現頻度と危険性を考え、A級ダンジョンからとなっていた。

 

 なので出現頻度が数カ月に一度のB級ダンジョンの場合は、繁殖期の少し前にダンジョンを攻略し活動を停止させる。

 

 出現頻度の高いC級ダンジョンは攻略したとしても、繁殖期の間に新しくダンジョンが生まれる可能性が高い。

 その場合は何処にダンジョンが発現するか予想できない為、人々の危険は増大する。

 なので魔物が這い出てくるのは仕方ないと諦め、冒険者達が人々を魔物から守っている。

 


 冒険者にとってもダンジョンに潜れない繁殖期の護衛の仕事は意外と良い稼ぎとなり、相互に利益があった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る